第二十七話
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隠せない。
「あの野郎の居城に攻め込んだのさ。お前らが粗方片付けていたから攻め易かったぜ。
まぁ、肝心のあの野郎は逃がしちまったがな」
そうか、明智の本拠地を落としたわけか……だからこうして寝かされていたのだと。
もうあの変態に付きまとわれなくても良いとほっとした途端、意図せずに涙が零れた。
流石にみっともないと涙を止めようとするが、努力して簡単に止まるようなものでもないから困ってしまう。
「何かされたのか?」
「いえ、まだ何もされてはおりません……ですが」
正直に言えば怖かった。刀を向けられる以上に恐ろしかったと感じたことは今まで無かった。
戦場においてもあれほどの恐怖を覚えることはないというのに、どうしてあの男を恐ろしくなど思っていたのだろうか。
……いや、あれを恐ろしいと思えない方が寧ろ異常かもしれねぇ。
だが、解放されて安堵して、こうして涙を零す俺は情けないことこの上ない。
竜の右目と呼ばれた人間が安堵して泣くなどと、女々しいにも程がある。
こんな俺の様子を見ながら政宗様は、ただ厳しい顔をされて静かに口を開かれた。
「小十郎、俺は織田を攻めようと思う」
「……織田を、ですか?」
思わぬ言葉に止まらなかった涙も止まり、政宗様の言葉にただ俺は驚いている。
確かに織田を攻めるには格好の拠点になるだろうが、何故織田を攻めるなどと急に。
「実はな、お前が明智に攫われている間に織田を潰すために同盟を結ばないかと打診があった。
一度は突っぱねたんだが、奥州単独で渡り合えるほど奴は弱くねぇ……。それにこれで織田には借りが出来た。
俺の二つの右目を奪おうとした罪は重い……その身にきっちり味あわせてやらなきゃならねぇ」
西を制圧している織田は、今度は関東制圧に乗り出そうとしている。
随分と手を焼いているようではあるが、それも時間の問題という気はする。
関東制圧が済めばいよいよ次は奥州と羽州に来るだろう。
いや、羽州は既に織田の傘下に入る腹積もりでいるようだから、実質奥州を潰せば東北は制圧が終わる。
西国のほとんどを制圧する織田と奥州一国のみの伊達では確かにまともに戦うのは無理がある。
織田包囲網と名付けられた上杉、武田、徳川、そして伊達に
西国からは毛利と長曾我部が加わった大連合軍を以ってすれば相手が第六天魔王とはいえ押せるだろう。
「小十郎、しっかり身体を休めておけよ。長曾我部と毛利が動いたと知らせを受けりゃすぐにでも動かなきゃならねぇ」
「御心配召さるな、小十郎は」
「鏡持ってくるか? テメェが今どんな顔色してんのか分かってねぇだろ」
真っ青だぞ、そう指摘されて俺は何も返せなかった。胸痛は治まったとはいえ
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