第二十七話
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口の中に嫌な苦味のある何かを放り込まれた。
「飲み込め!」
飲めと言われても飲み込めるような状況でもない。
しかし、独特の苦味のあるそれが何であるか分かったこともあり、
またその声の主に飲めと言われた以上飲まないわけにもいかず、必死で飲み込んだところで誰かに抱き起こされた。
口の中に放り込まれた薬が聞いたのかしばらくして胸痛が治まっていき、
痛みも大分やわらかくなったところで身体の力を抜き大きく息を吐いた。
俺の身体を支えていた人の顔を見れば、やはりその人は政宗様だった。
「まさ、むねさま……」
ああ、政宗様だ。もう二度と御目にかかることは出来ねぇと思っていたというのに。
こうしてまた御会い出来たことが嬉しくてならねぇ。嬉しくて涙が零れそうだ。
「馬鹿野郎、そんなになるまで力使いやがって……死ぬつもりか!?」
心配そうに怒鳴る政宗様に、俺は苦笑する他無かった。
死ぬ気はないのだが、あの場合死ぬ気で攻撃しなければ逃げた姉上の身が危うい。
下手をしなくても姉上をとっ捕まえてとんでもねぇことをしようとするに決まっている。
ただでさえ、二人で掴まっていた時にとんでもねぇことをさせていたんだ、あれ以上のおぞましい事を……考えただけでも身体が震えてきやがる。
「景継はどうした」
「……逃がしました。何処へ行ったのかまでは……ところでどうして政宗様がここに?」
どうやら前田の奥方殿が俺と姉上が攫われたことを奥州に知らせてくれたようで、政宗様が兵を率いてやってきたそうだ。
攫われたのはこちらの不手際と加賀の方で行方を探ってくれたとかで、政宗様に明智に捕らわれていると情報を流したのだとか。
変態の嫁、と思っていたのだがこれは素直に感謝しなけりゃならねぇな。そうでなけりゃ、今頃俺は死んでいたのだから。
とびきり美味い野菜を奥州に戻ったら送ってやらなきゃなぁ……。
「妻を持つ前に側室なんぞに据えられちまうとは、お前も難儀だな……お前ら、何もされてねぇよな?」
「何かされる前にこうして逃げて来たのです。
ここまでどうにか逃げてきたのは良いのですが、追っ手に追いつかれそうになり、小十郎だけここに残って姉上を」
抉るような痛みが胸に走り、思わず小さく呻いてしまう。
無理をするな、そう言って政宗様は俺を文七郎と左馬助に託し、よろよろと歩いてきた明智の野郎と対峙する。
「ああ……痛い、痺れるようなこの感覚がたまりませんねぇ……」
相変わらずの変態な発言に、身体が動くのならば逃げ出したい気持ちになる。
明智の野郎は恍惚、って顔をしてやがるし、視界にも入れたくねぇ。
「テメェが魔王の子飼いか。明智光秀、うちの小十郎と景継に目ぇ付けるなんざ、
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