第3章 リーザス陥落
第69話 敵は人類最強
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「我 慢 し て い る の だ」
ぞわりと、物理的なまでに濃密な重圧が、耐え切れぬ、といった様子で、ノスの周囲に漏れ溢れた。 気の弱い者であれば、それだけで意識を奪われるであろう、圧倒的な強者のみが発する重圧。
だが、ハンティは臆した訳ではなく、冷静に視線でそれを受け止めた。
この程度で、臆する様な 器用な心の持ち主ではない。ここ最近、もっと奇っ怪な現象を体感しているのだから。
「……ほう」
色々と脅かしているつもりだった ノスだが、意にも返さないハンティの姿を見て、軽く声を上げた。だが、それも一瞬だ。
「ふふ……精々、あの皇子のお守りに励む事だな。……私などに、気を配る前にな」
「…………」
立ち去るノスの広い背中が消えるまで、ハンティは視線を動かす事はなかった。
完全に、ノスの姿が消えた所で、ハンティは 肩で息をしていた。
大きく 息を肺に吸い込み、そして 吐き出す。その仕草を二度、三度と続けた所で、その黒い髪を何度も掻きむしった。
「ったく……パットン。ほんとに厄介なヤツを抱き込んじまいやがって。こっちは 夜も眠れなくなるってもんだ。あのバカは寝てるみたいだけど」
その額からは、一雫の汗が流れ落ちていた。
魔人の中でも、上級クラスの力を秘めているノスの重圧を正面から受けきったのだ。……仕様がない、と言えばそうだ。だが、ハンティが精神的に臆していない、と言うのも本当だ。
先ほども称した通り、以前にも、あったからだ。重圧の種類が全く違う代物だが それ以上の気配を、荘厳たる気配をこの身に浴び、そして包み込まれたのだから。
「……ユーリ。アンタがこっちにいてくれたら、色々と話したいんだがな。意見も訊きたい。あの化け物をぶっ潰す方法、手段とかを、ね」
柄にもなく弱気な言葉を発してしまうハンティだった。
今までは、守る側ばかりだった。世話のやける子供、パットンのお守り役を常にしていた。そんな彼女の背中を任せられるに足る男なんて、ここ100年でも、トーマくらいしか有り得ない。勿論それは強さを考慮して、と言う事もある。
精神的にを含めたら まだ何人かいるのだが、今現在の状況にて、彼女を支えられるか? と問われれば首を縦には振れない。
それは、トーマとて例外ではない。それ程の強大な力を内包している化け物が傍にいるのだから。
「準備はしてきた、か。……正直頼りない、って思うけど。やる時にはやらないと、ね。……ただ、進む。進み続ける。時代の流れに身を任せつつも、あたしの信念に従って。ただ、真っ直ぐに………アイツの言うとおりに」
ハンティは そう 呟くと そのまま 姿を消したのだった。
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