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チャパン
第四章
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「御前のものになる」
「それもだね」
「全部な。マナスを全て覚えたら」
 その時はというのだ。
「この服を着て詠ってみろ」
「はじめてのマナスを」
「そしてマナスチになるんだ」
「うん、じゃあな」
「いいな、その時に全てやるからな」
 微笑んでだった、オルズベックはビタリに言った。そしてビタリはこの日からだった。
 読むだけでなく詠いもしてだった、マナスを覚えていった。時には書くこともしてだ。学業よりも励む程だった。
 十八になって暫くしてだ、遂にだった。
 彼はマナスを一句一句全て覚えた、その全てを祖父の前で詠ってだった。
 あらためてだ、祖父に問うた。
「どうかな」
「見事だ」
 オルズベックは席に座り腕を組んだ姿勢で孫に答えた。
「まだ詠い方は未熟だがな」
「それでもだね」
「全て覚えた、確かにな」
「それじゃあだね」
「チャパンは御前のものだ」
「アク=カルパクもブーツも」
「笛もだ」
 その全てがというのだ。
「御前のものだ」
「じゃあそれを着て」
「詠って来るんだ、皆の前でな」
「わかったよ、それじゃあね」
「場所はわしが紹介する」
 マナスを詠うその場所はというのだ。
「その時に詠うんだ」
「それじゃあね」
 ビタリは祖父の言葉に確かな笑みで頷いた、そしてだった。
 彼は祖父に連れられてある店屋に案内された、その裏手でだった。
 チャパンに着替えた、アク=カルパクも被り。
 ブーツを履いて笛も持った、祖父は自分の服を着た孫にだった。目を細めさせてそのうえで暖かい声で言った。
「わしよりも似合ってるぞ」
「そうかな」
「ああ、顔もいいからな」
 だからというのだ。
「小説の吟遊詩人みたいだぞ」
「そんなにいいのかな」
「わしの若い頃そのままだ」
 こうまで言うのだった。
「これはもてるな」
「いや、もてるとかはね」
 祖父の言葉にだ、孫は照れ臭く笑って返した。
「別に」
「ははは、恥ずかしいかそう言われると」
「かなりね、けれどだね」
「ああ、そのチャパンを着てな」
「これからマナスを詠うんだね」
「マナスチになるんだ」
 マナスを詠うそれにというのだ。
「いいな」
「うん、じゃあ詠って来るよ」
「行って来い、緊張しないでな」
「リラックスしてだね」
「緊張することはないんだ」
「いつも通り詠えばいいんだね」
「詠うのは同じだ」
 練習の時もこれからの本番もというのだ。
「あがるな、落ち着いてな」
「詠えばいいんだね」
「そうだ、御前はもうチャパンを着たマナスチだ」
 完全にだ、そうなっているというのだ。
「だから安心して行け、いいな」
「それじゃあね」
 ビタリは祖父の言葉ににこりと頷いて詠いに行った、そして
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