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ジミーのギター
3部分:第三章
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さん達は俺の歌に感動していつもの倍のチップを渡してくれたってさ」
「じゃあ書けよ」
「俺達のことをな」
「ああ、勿論さ」
 そんな話をしながら店の演奏を成功に終わらせた。そのおかげでこの日は美味い飯と酒、雨露を凌げる場所を手に入れることができた。彼にとっては最高の一日となった。
 彼は朝になると安いホテルを出た。そして店でパンと牛乳を買った。それを食べた後で街の公園に出た。そこでまたギターを奏でだしたのである。公園は静かでまだ人も少ない朝の露と木々の緑が心地よかった。ジミーはその中でギターの練習をはじめたのだ。
 ベンチに座ってギターを奏でているとそこに誰かが来た。気配に気付いてそちらに顔を向けるとあの女の子がいた。
「昨日凄かったらしいわね」
「まあな」
 女の子に顔を向けて答えた。
「大成功だったぜ。これでスターに一歩近付いたってわけだ」
「おめでとう」
「ああ。ところでさ」
 ここで彼女に問わずにはいられなかった。
「昨日急に消えたよな」
 そのことについて問う。
「どうしてなんだ、あれは」
「気にしないで」
 それに対する返答はあまりにも変わったものであった。
「それは」
「おいおい、気にするなってか」
 あまりにもぶしつけな言葉に思わず笑ってしまった。
「何だよ、それって」
「よくあることじゃない、女の子が急にいなくなるって」
「そうか?」
 そんなことは初耳だった。ジミーは顔を顰めさせた。
「そんなのは聞いたこともないがね」
「けれど今はこうしているわよ」
 何か反論を煙にまくような言葉がまた出た。
「それでいいじゃない」
「まあどっちにしろあんたとはまだそんなに話したわけじゃないしな」
 よく考えればそうだった。深い関係ではとてもないしどうでもいいと言えばそうなるものだった。ジミーにしてもこの街もすぐに立ち去るものなのでまあいいかと思った。
「じゃあ気にしないでおくさ」
「そういうこと。それでね」
 女の子はまたジミーに言ってきた。
「昨日の歌詞よかったでしょ」
「それはな」
 彼も認めることだった。
「成功はあんたのおかげだな」
「感謝しなさいよ」
「有り難う」
 素直に礼を述べた。
「御礼に朝飯でもおごろうか?」
「それはいいわ」
 ジミーの申し出はあっさりと断るのだった。
「別にね」
「いいのかよ」
「別の御礼が欲しいの」
 そのうえでこう言ってきた。
「いいかしら」
「いいかしらって言われてもよ」
 ジミーは微妙な顔を女の子に向けて言う。
「俺あんまり金ないぜ。見ればわかると思うけれどさ」
「お金じゃないわよ」
「じゃあ何なんだ?」
 お金じゃないと言われたら。何のことかと思った。

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