第一章
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ウィッグマン
パプワニューギニアはオーストラリアから見て海を挟んで隣国だ、それなり以上に深い付き合いもある。
だがそのオーストラリアの南の端のタスマニア島に住むビリー=リーはその国の名前を聞いてもこう言うだけだった。
「そんなの聞いても」
「ピンとこない」
「そう言うんだなら」
「それ皆もだよね」
友人達にもだ。ビリーは尋ねた。
「パプワニューニギアっていったら」
「熱帯か?」
「雨が多くて」
「それで昔ながらの生活をしている」
「そういう国だよな」
「部族の」
「まあ部族って言ったら聞こえが悪いかも知れないし」
それにとだ、ビリーはその黒髪に青い目でだ、黄色がかった白い肌であまり彫のない大柄な身体で言うのだった。この外見は中国系の母からのものだ。
「差別的な」
「まあ部族っていうと」
「そんな響きあるね」
「あまりよくない」
「どうしても」
「だからね」
それでというのだ。
「僕もあまりね」
「使わない方がいいよな」
「こうした言葉は」
「どうしても」
「うん、けれどね」
それでもというのだ。
「あの国のこと聞かれても」
「どうもピンとこない」
「離れてるって感じで」
「だってここタスマニアだし」
それでというのだ。98
「どうしてもね」
「そう言われても」
「あまり思うところがない」
「そうなるか」
「あの国よりも」
むしろというのだ。
「ニュージーランドかな」
「兄弟国だしね」
「我が国とあの国は」
「何といっても」
「何回か言ったことあるし」
それにとだ、ビリーはさらに言った。
「言葉も通じるし風俗習慣も同じ感じで」
「同じイギリスの植民地だったし」
「余計に」
「ニュージーランドはね」
「馴染みがあって」
「親しみもあるよ」
「知った仲だね」
「そうなんだよね、だからあの国のことはわかるけれど」
海を挟んで隣の国でもというのだ。
「それでもね」
「パプワニューギニアについては」
「あの国は、だよね」
「本土を挟んで相当な距離もあるし」
「このタスマニアからだと」
「やっぱりピンとこないよ」
また言うのだった。
「どうしてもね」
「行くこともないかな」
「僕達はね」
「まあそうした国もある」
「それ位かな」
「あの国よりも」
むしろとだ、ビリーはくした国を挙げた。
「日本とかアメリカとか」
「そうした国の方が付き合いあるかな」
「あと最近は中国とも」
「インドネシアとも」
「けれどパプワニューギニアは」
「どうにもね」
付き合いがないというのだった、どうしても。
だがある日のことだ、ビリーは急にだった。通っている学校のテリー=ハワ−ド
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