災いの種
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上の、新しく詳細な事態の変化等、報告はございますか? 各大司教方」
挙手、返答、一切無し。
たっぷり数十秒の沈黙を挟んで、進行役の枢機卿がこくりと頷く。
「では、今後の基本姿勢についてですが」
「少々よろしいでしょうか」
「どうぞ、カストラルのテネシー大司教」
円卓に席を連ねる、老齢と言うには若く、青年と呼ぶには老けた男性が、左手をスッと挙げた。
枢機卿の返答を受けて立ち上がった彼は、周りをぐるりと一瞥し……って
ああ、なんか嫌な予感。
「失礼ながら皆様方。本来は相容れぬ異端の上に立つ者達が、揃いも揃って主神アリア様の御姿を拝したと自ら申告し、同胞に背を向けてまで、アリア信仰に頭を垂れているのです。真偽の証明は、それだけで十分でしょう。我々は、今こそ門扉を大きく開き、教義を広く世に説くべきと考えますが、いかがか?」
うああ────…………。
本当に居たよ、困ったさんが。
血気盛んな人間って、どこにでも居るなあ。
「意見をお許しください」
「どうぞ、エルドランのファーレン大司教」
円卓の一席を埋める、七十代前後の年老いた女性が立ち上がった。
彼女は、円卓を見下ろす枢機卿方に目線を配り。
一度頭を下げてから、円卓の面々を見渡して。
最後に、テネシー大司教へと体の正面を向ける。
「失礼ながら。話題に上がる女性は世界中を点々と現れるばかりで、一度に大勢の人間が目撃した例は聞き及んでおりません。彼女が真の主神アリア様であられるとすれば、その行いには必ず意味がある筈。我々はこれまで通り神託が下される日を粛粛と待つべきです。それに、彼女の出現で異教徒が過敏になっている最中、布教活動など行えばどうなるか……貴方の国が一番理解しているのではなくて? カストラルのテネシー大司教」
何もしてないのに投石と言葉責めを食らって小競り合いに発展した、現在唯一の国の大司教は、しかし。
「人は時として受け入れがたいものを前に愚行を選択してしまうものです。ですが、そんな彼らを赦し諭し導くのも、我々アリア信仰の役目でしょう」
はいはい。
多分本気で言ってるんだろうけど、矛盾してるからね?
いろんなところが矛盾しまくってるからね?
それを口にするにはまず、自国の信徒を徹底的に教育し直さないとだよ、テネシー大司教。
「どうぞ、アルスエルナのコルダ大司教」
私が無言で挙げた左手に気付いて、枢機卿が発言を許可してくれた。
席を立ち、周りに一礼してから、テネシー大司教に向き直る。
「失礼ながら。貴方に一つお尋ねしたいのですが、よろしいか?」
「なんなりと」
きっと、彼の信仰
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