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風葬
6部分:第六章
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「食べるものも少なく。特に肉は」
 その肉の話だった。
「そうそう手に入るものじゃありません。獣にしろ鳥にしろいつも捕まるわけではなし」
 そしてそれはそのまま村にとっては死活問題になる。食べ物が少なければ当然のことだ。私は唖然としていたがそのことは自然に頭の中でわかった。
「それで食べはじめました。死んだ者の肉を」
「な・・・・・・」
「いやいや、人は死んでもそれでは終わらない」
 老人はここでは妙に楽しそうに話してきた。
「その通りですなあ、本当に」
 そしてまた私達に言うのだった。
「ささ、本当に特別にしか食べられない馳走です。どうぞどうぞ」
 私達の記憶はここから途切れている。おそらく血相を変えて老人の家も村も山も飛び出たのだと思う。気付いた時には朝になっていてその山からかなり離れた別の山にいた。荷物だけは持っていてそのうえで身体中汗まみれだった。私も教授もそれから思いきり吐いた。
 このことを信じてくれる人はいないかも知れない。しかしこれは本当のことだ。まだ日本には風葬が残っていてそして肉を食べるならわしも残っている。私と教授が体験したこのことは今まで誰にも言ったことも書いたこともない。だが今ここでこのことを書いておきたい。信じてくれるかどうかは別として真実のこととして。


風葬   完


                  2009・5・18

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