第二十四話
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私の答えにナチュルは腑に落ちなさそうな顔をした。それもそうだろう、ヒューマンだから一生が短く感じるんじゃないのかと考えるはずだ。そこは種族間の誤差だから何ともいえない。少なくともあと六十年は生きるであろう私だけど、やっぱり先は長いなぁと思うことは無い。やはり今もセレーネ様のことでいっぱいいっぱいだからなんだと思う。
上手い答えを用意できなかった代わりに、先の質問については答えることが出来る。
「ダンジョンに潜り続けたと言うより、そうする他無かったから、というのが正しいです」
「えーっと、よく解らないわね」
「歴代最強だとか最も有名な冒険者だとか言われてた私ですけど、私から見た私の人生は普通の人と変わりませんでしたよ。もちろん持てはやされたりちょっかいを受けたりしますが、やっぱり私はセレーネ様のために生きていましたし、またそう生きようと決めてましたから、未確認の鉱石や素材を持ち帰ってセレーネ様を喜ばせたい、驚かせたいと思って深層に足を運びましたし、そのためには自分が強くなくてはならないからやはりダンジョンに潜ってました。だから結局私に出来たことはダンジョンに潜り続けることくらいだったんです」
「……じゃあ、ダンジョンに何かを求めるのは間違っているの? 聞く限りではあくまで手段に過ぎなかったみたいだけど」
「いえ、そうまでは言いません。むしろダンジョンにしか手が無いのだったらダンジョンに手を求めるしかないでしょう。強いて言うなら出会いでしょうかね。その対象は物だったり生物だったり現象だったり、不特定多数の不詳のもの全て。ややこしい言い方になっちゃっいましたけど、明確な何かを求めるより、ダンジョンに秘められた何かそのものを求めていたんでしょうね、私は」
確かに最初はセレーネ様の生活を支えるための手段として冒険者になってダンジョンに身を投じてた。けれど途中から強くなることよりも神秘を求めて潜るようになってたし、それがセレーネ様に尽くせると思って取った行動だった。
「私にはナチュルさんの不安を取り除く答えを用意することはできません。その答えはナチュルさん自身しか知りえないことでしょうから。ただ、先を思って不安になるくらいだったら、まず不安を忘れるくらい目の前のことに取り組んでみたらどうです? いつ終わるかも解らない目標なんですから存分に没頭すれば、きっと答えを見つけることが出来るはずです」
言い切った私の顔をじっと見つめたナチュルはふっと口元を緩めて、唇に掛かっていた煤を軽く払った。
「十分不安を消せる答えじゃない」
「そう、でしょうか? 上手く言葉に出来なかったのですが……」
「えぇ、つまり今私は薙刀を作ればいいんでしょう? 今まで通り気が遠くなるくらい打ち続けていれば、いつか目標に辿り着ける。そのいつ
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