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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第二十四話
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いるはずだから、ここで下手なことをして余計な勘ぐりを入れられると非常によろしくないんだけど、早速その団長であるアスフィを撃退しちゃったもんだから困ったものだ。

「解りました。ありがとうございます」
「安いものよ。と言っても興味無かったことだから詳しいことは知らないけど」

 ロキ・ファミリアとヘファイストス・ファミリア合同の遠征当日の早朝。つまりアスフィの一件の翌日に私は遠征に動向するナチュルへの挨拶も兼ねて彼女の情報を得るべく工房に赴いたのだ。本当に薙刀と私のこと以外には無頓着のようで、今日もエルフ特有の美しい白い肌に煤がたくさん付いていたり髪の毛が乱れていたりである。
 ナチュルはそれがどうかしたの? と聞いてきたけど、余計な心配を掛けたくないので曖昧な返事をしてうやむやにした。
 それから自然と今日行われる遠征についての話になり、その地の処女雪に足跡をつけた先人としてアドバイスと激励を送った後だった。

「ねえ、レイナはどうしてダンジョンに潜り続けたかしら?」

 とっぴな質問にちょっと返事が遅れた。うん? と相槌とも先の促しとも取れる声を漏らした私に、ナチュルは壁に立てかけられている無数の薙刀たちに目線を注ぎながら続けた。

「私ね、金属を鍛えてるときふと思うのよ。もし私の求めてる武器が私の手で作れたとき、私はその後どうするんだろうって。こんななりしてても一応エルフだから寿命は結構あるのよ。だから、その残った人生を何に使うのか少し不安に思ってるのよね。変なことを言うけど、ヒューマンの寿命は私たちエルフよりずっと短いでしょ? だからヒューマンたちはその短い時間の中でいったい何を考えているのか気になって」

 あー……。確かエルフって長寿の者だと七百年は生きれるんだっけ? 私たちヒューマンは基本七十年前後だから、簡単に言えば十倍の差があるわけだね。私には到底解らないけど、行く当ての無い何百年って相当苦しいものなのかな。現に不老不死の神様たちが娯楽に飢えて下界に下りるなんてビックリな状態になってるんだし。
 だからというか、私にそういった実感がないから『短い一生だからこれはしなきゃ!』みたいに思ったことは無いかな。

「目先のことでいっぱいでしたよ。とある賢者曰く『何事も成さずにはあまりに長いが、何事を成すにはあまりに短い』のが人生だそうです。私の場合はセレーネ様に尽くしたい一心だったから一生涯を計りに何かをしなくちゃと考えたことは無かったです」

 悩みの解決に導けない答えしか用意できないのが悔しいけど、人として一度人生を駆け抜けた経験を持つ者としての見解だ。今振り返ってみても一生はあっという間に過ぎたように思える。それはきっと、目先のことを片付けるのに必死になってたから全体を見る余裕が無かったからなんだと思う。
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