8部分:第八章
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ってやつだ。犬はあったかい。あんまり寒いと犬を抱いて寝る。そうしたら暖かい。
「いや、もっといい方法があるんだ」
だが俺はここでこう言った。
「もっといい方法?それは一体」
「美人だよ」
俺はにんまりと笑ってこう言った。
「美人」
「彼女を作るとな。冬の朝も寒くないぜ。犬よりもずっといい」
「わかりました。それじゃあ彼女を作ります」
「ああ、頑張りな」
まあこればっかりは縁だ。顔が悪くても性格がまずくてもできたりするしその逆もある。頑張ってもある程度以上はどうしようもないものだ。
そんな話をしているうちにエレベーターが止まった。そして俺の部屋の前に来た。
「ここですね」
「ああ」
キーで扉を開ける。そして玄関に案内する。
「そこら辺に置いておいてくれ」
「わかりました」
兄ちゃんはそれに従って荷物を玄関の端に置いてくれた。俺はそれを見て財布を取り出してそこから札を一枚手渡した。
「悪いな」
「いえいえ、こちらこそ」
チップを受け取った時の顔といったらなかった。やたらと明るい笑顔だった。
「またお願いしますね」
「ああ」
兄ちゃんはエレベーターの方に向かって帰って行った。何かやたらと現金な兄ちゃんだとわかった。
「さてと」
俺は荷物に顔を向けた。
「そろそろかな」
何かこの荷物が怪しいかな、と思った。
「来るとなれば」
そう思うと開ける気にはなれなかった。
まずはそのまま置いておくことにした。家の中に戻る。
そして一息つく。それからどうしようかと考えた矢先だった。
一枚の紙切れが窓に飛んで来た。そこにはあの文字が書かれていた。
「フェイントってやつか」
俺はその紙切れを見て憮然とした顔で呟いた。
「やってくれるぜ、ったくよお」
いい加減嫌になってきた。身体の疲れも何か増してきていた。
これでチェックだ。チェックメイトまでもう少しだ。
あと一日しかなくなった。いい加減どうすればいいかわからなくなった。どうやら奴は俺に意地でも文字を見せたいらしい。そして最後の文字の番になってきていた。俺も流石に焦りを覚えてきていた。
「どうするかな」
俺は考えた。見ないで済めばいい。しかしどうあがいても見てしまう。
だったら目を潰せば見えなくなる。しかしそんなことをしたら後が大変だ。視力が戻ってもそれまでの目じゃない。それはそれで後の仕事に支障が出る。遠くを見る場合もあるヒットマンの仕事だ。それで目をどうにかしちまったら話にならない。盲目の殺し屋なんてのが日本にいるらしいがあんなのは嘘っぱちだと思っている。
どうしようか。俺は考えた。目を塞いでも結局限度がある。完全に見えなくなるようにするしか方法はない。
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