6部分:第六章
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タフじゃなきゃこの世界ではすぐにお陀仏だ。
どうしてかわからないまま俺は部屋を出た。そしてマンションの側の店で朝飯を買うことにした。
ニューヨークは朝から忙しい。もう道は車で溢れ、人が左右を行き来している。俺はそうした朝から慌しい風景を見ながら店に入った。
「いらっしゃい」
すぐに明るい声でウェイターが声をかけてきた。
「何にしますか?」
「トーストをもらおうか」
俺は特に考えることなくメニューを頼んだ。
「トーストだけですか?」
「じゃあミルクももらうか」
追加した。
「それでいいかな」
「はい、それじゃあ」
俺はカウンターに座った。見れば側に新聞が置かれている。
「ウォール=ストリート=ジャーナルか?」
「いえ、ニューヨーク=タイムズですよ」
「そうか。少し読んでいいか?」
「ええどうぞ」
どちらかというとニューヨーク=タイムズの方が好きだt。俺達みたいな所謂マイノリティって連中に対していいことを書いてくれるからだ。まあこれは単なる好みってやつだ。
新聞を手に取って開く。するとまず下の広告が目に入った。
「!?」
そこにはアルファベットが一文字あった。『L』と。最初何の広告かと思った。
見ればそれは映画の広告だった。それで一文字大きく書いて目を引かせていたのだ。
「どうかしましたか?」
「いや、何でもないよ」
俺は咄嗟に誤魔化した。だが一つ気になることがあった。
(L、か)
それだ。何か四日続けて一文字だけがクローズアップして目に入っているようだと思った。偶然だろうがそれについて妙に思うものがあった。
偶然なのはわかっている。だがどうして。俺はそれについて考えていたがそこにミルクがやって来た。
「お待たせしました」
「ああ」
見ればコップにミルクが並々と注がれていた。この店は量が多いので有名だ。だから贔屓にしている。
「もうすぐトーストも来ますので」
「ああ、わかった」
俺はそれに応えた。そしてミルクを口に含みながら新聞の中身を読んだ。特に変わったニュースはない。大統領の支持率がどうとか景気がどうとか。大統領に関しちゃ俺が暗殺の依頼を引き受けない限りは関係ない。大統領を暗殺したとなっちゃこっちの世界ではかなりの有名人になれる。そしてFBIかCIAに影で追われて抹殺される。
景気はまあ関係ある。景気がよくなれば報酬が増える。だからこれはわりかし注意していた。
しかし景気に関しても特に変わりはなかった。何もない。株が大暴落したわけでも急騰したわけでもない。俺はトーストをミルクで流し込むと店を後にした。
景気とかのことは頭から消えていた。俺はあの一文字について考えていた。
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