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キル=ユー
2部分:第二章
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いた。気付いた時にはもう手遅れだった。 
 耳元で囁いてきた。暗く、地の底から響く胸の悪くなる様な声で。そいつは俺に囁いてきた。
「キル=ユー」
 一言だけだった。それだけでそいつは姿も見せずに俺の側から去った。
「何だ、今のは」
 空耳かと思った。周りには怪しい奴は誰もいない。そう思うのが自然だった。
 だが嫌な予感がした。同時に悪寒も。そうじゃないことは勘が教えていた。
「誰だったんだ、一体」
 しかしそれはわかりはしなかった。結局怪しい奴は何処にも見当たらなかった。俺は自分のマンションに帰ってそこで休むことにした。
 こんな仕事だから安全には気を使っている。セキュリティのしっかりしたマンションに住むことにしている。身分は詐称している架空の名前に架空の経歴、そしてありもしない会社の人間として入っていた。どれもこれも嘘だ。だが裏のことは表にはわかりはしない。マンションの方でも俺が表の人間だと信じて疑わない。俺はこのマンションにのうのうと暮らしているというわけだ。
 そのままシャワーを浴びてベッドに入った。寝る時には何も着けない。ただ枕の下にはピストルを忍ばせておく。こいつだけが俺を守ってくれるからだ。この世界じゃ自分の身は自分で守るのが掟だ。これだけは忘れない。
 朝になる目を覚ます。仕事がない時は気ままに起きる。そしてキッチンの冷蔵庫に向かう。
 朝は食欲がない。しこたまに酔った後の目覚めが多いせいかあまり食べたいと思った朝はない。今朝は酒は残っていなかったがそれでも食欲がないのは変わらない。とりあえずトランクスだけ履いて冷蔵庫に向かった。
 牛乳でも飲むつもりだった。ノブに手をかけて開ける。するとどういうわけかそこから一枚のビニールが出てきた。
「!?」
 見たこともないようなビニールだった。スーパーによくあるビニール袋だが何かおかしい。白地に大きくKのイニシャルが描かれていたのだ。俺はこれを見て思った。
「K!?」
 そんなイニシャルのスーパーに入ったことがあるだろうかと。だが記憶にはない。コンビニにもストアにもない。とんと記憶にないのだ。
「何なんだ、これは」
 だがその中にあるものには記憶があった。一本のスタミナドリンクだ。
「あの店のか」
 ふと立ち寄ったドラッグストアで買ったものだった。そういえばそこでビニール袋に入れてもらった。あのストアのものだったのかと妙に納得した。
 納得はしたが食欲があるわけじゃない。結局牛乳を一本飲んで終わりだ。ラフな服を着て身支度をした後でとりあえずトレーニングに出た。この仕事は体力も必要だ。時間があれば身体を鍛えておかないと死ぬ羽目になる。生きる為にもトレーニングは欠かせなかった。

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