第二十話
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『足りない。』
そのジュエルシードは、神から改造されたただ一つの・・・本当の奇跡だった。願えば叶う。使用した者の願いを叶える方法を、使用者の知識から読み取り、それを正しく実行する。まさに奇跡の宝石であった。
これを知れば葵はひどく落ち込むだろうが・・・実は彼は、戦う必要など一切ない。
何故なら、彼の手に付いているのは、あくまで『ジュエルシード』であって、『パッチ』ではないからだ。
順を追って説明しよう。
このジュエルシードは、先程も説明した通り、どんな願いでも叶えることが出来る。それが例え歴史の改変なんていう馬鹿げたような願いでも叶えよう。
―――力の及ぶ範囲で、だが。
当然だが、何かを為すには相応のエネルギーが必要となる。難しい願い程多くのエネルギーを消耗するのは必然であった。葵が願った『不老不死』。これは、全ての願いの中でも最上級に叶えるのが難しい願いの一つであった。
―――何故なら、彼がトラックに轢かれたとき無意識に願った『不老不死』とは、『例え神に干渉されても死なない』レベルのものだったからである。事故に巻き込まれようが災害に巻き込まれようが、最悪、神自身と戦うことになっても生き残れる。肉体の強度、戦闘能力に防御力や回復力、果ては精神力に至るまで、全てを神と同等以上のスペックにすることを願ったのである。
彼は、転生の際に、神が実際に存在することを知った。この世には、運命すらも覆す最強の存在がいると知ってしまったのである。理不尽な悲劇により死を経験した葵は、『神が気まぐれを起こして自分を殺しに来る』可能性を捨てきれなかったのだ。
では、その全知全能の神すらも干渉出来ない位階まで、瞬時に葵を強化するのは、果たして可能だろうか?
答えは否、であった。
ジュエルシードに凝縮されている、次元を滅ぼすことが出来る程のエネルギー。それらを全て使用しても、到底足りるわけがなかった。葵の願いは、例え神謹製のジュエルシードであろうとも、叶えられないものだったのだ。
―――だが、何回かに分けてならばどうだろう?
階段に例えてみると分かりやすいかも知れない。階段を一段一段踏みしめて百段昇るのは簡単だが、たった一歩で百段登るのは不可能だ。ジュエルシードは、これこそが彼の願いを正確に叶える為の手段だと判断したのである。そのために、ジュエルシードは葵の記憶の中から相応しい能力を選び出した。それが『パッチ』である。生存するための十分な戦闘能力などがあり、尚且つ順々に強くなる能力として、『パッチ』はジュエルシードが見本にするのに相応しい能力であった。
つまり、エネルギーを蓄え、十分な量が貯まったら一回ずつ進化させていく。これなら、時間がかかるが、確実
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