第3章 黄昏のノクターン 2022/12
22話 白亜の水都
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中という足場のない位置での発動だった所為もあって僅かに跳ねる程度に留まり、突進技というにはあまりにもお粗末なものとなってしまったが、それでも落下する鮫を捉えた切っ先はそのまま喉元を穿ってHPを大きく削る。しかし、ゲージは赤を数ドット残しており、スタンの切れた鮫は水中に逃れようと大きく身体を身もだえさせる。
――――しかし、俺とて相手の土俵に乗り込む気は毛頭ない。
鮫の喉に刺さったままの愛剣、その柄尻目掛けて脇に引いた左拳を撃ち込む。体術スキル単発突き技《閃打》の正拳突きが推進力となって鮫を捉えていた刀身を楔の如く更に深く突き刺し、HPを容赦なく全損させる。
圧し掛かるように水面に落ちてきた鮫の身体がポリゴン片となって爆散するのを見届け、SAO正式サービスでは初の水中戦闘は何事もなく終わりを告げた。流されていたフルスの実を回収し、リザルトウインドウを放置しながら砂浜まで泳ぐ。本流から逸れただけあって、この辺りはだいぶ流れが大人しい。
「………おお、すげーアクセサリー」
浜辺に到達し、ウインドウで筋力値ボーナスと《水濡れ無効》効果の付くアクセサリーを入手していたことを確認。性能から見て、どうやらレアドロップに類するものだろう。鮫の歯のネックレス《オハブ・レイ》を早速装備すると、確かに服の湿った感触が消え、水の重さをまるで感じなくなった。筋力ボーナスは有難いが、殊に水濡れ無効効果とはこの第四層においてはこの上なく頼もしい。しかし、溺死まで無効化してくれる訳ではないので、どうあっても補助に留まるレベルだろう。有難いが、過信は禁物といったところか。
後は幾つかの食材用及び換金用と思しきアイテムの名前を確認しつつ、防具同様に水気の抜けた鞘に納刀。あとで武器の修復を行おうかとも考えたが、その手間も省けたようである。
「燐ちゃん、大丈夫だった!?」
「おう、あの程度………全然大丈夫じゃない」
「ど、どうしたんですか!? どこか噛まれたんですか!?」
「俺じゃなくてだな………」
予想だにしなかったヒヨリ達の姿に絶句した。俺の持つSAOの知識というのは、ベータ時代の記憶が判断基準になるが故、まさか水関連の表現がこれほどまで精緻に変貌しているとは思いも寄らなかったのである。《オハブ・レイ》を手に入れた俺にどうということはなくとも、ヒヨリとティルネルに至っては白のチュニックに下着だけという薄着の状態だ。当然、生地の柔いチュニックは水に浸されれば透けるし肌に貼り付く。正直な話、気付いていないとはいえ、そんな姿で平然とされると俺が辛いのだ。
脳裏に焼き付いた肌色やら褐色やら曲線やら膨らみやらをなんとか振り払い、足元でそよぐ一輪の花を見て鼓動を整えつつ、この事態を女性陣に伝えようとはするものの、それを為すだけの語
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