第3章 リーザス陥落
第64話 奪われたら取り返す
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そう言うと今度こそ、足早にここから出て行った。
『いったい何をよろしくしたらいいのだろうか??』と志津香は思ってしまう。
確かに、あの悪夢の中……攫われていく彼を見て恐怖した。
本当に怖かった。夢とわかってほっとした。……本当に夢だったかどうかを確かめるためにも会いたかったんだ。
「……ゆーっ」
志津香は、眠り続ける彼の名前を、ゆっくりと呟いた。
夢の中だったから……、想いを口にできたのだろうか?……現実だったら、言えるのだろうか?
それは……判らなかった。
でも、本当にユーリが何処かへと連れ去られたりしたら? ユーリに限ってそんな事は……と言う想いも確かにある。だが、今回の相手を見たら、それは希望的観測に過ぎないと言う事実も判った。
たった1人の魔人に、解放軍が瞬く間に突破されてしまったのだから。
「(……自分に、正直に。……わたし、わたしは)」
志津香は、ゆっくりと身体を起こし、そして 足をかけられた羽毛布団から出した。丁度ユーリの正面に座る様にベッドに腰掛ける。
正面から、ユーリの寝顔を見ていた。
この戦いが始まって、いや 以前のカスタムでの自身が起こしてしまった事件の時も、ユーリの寝顔なんて見た記憶がなかった。だけど、だけど確かに、この寝顔は覚えている。
幼いあの時の寝顔も、自分の記憶の中では確かに存在している。大きくなっても、寝顔は変わらない。
……こんな事を言ったらきっと、怒るって思う。でも、それは純粋な気持ちであり、決してからかったり、とか 邪な気持ち、そんなんじゃない。ただ、あの時は一緒に眠っていた。安心できる人の傍で眠っていたんだ。
心が温かくなる。安心出来る。……何より愛しさが、心の中に入ってくる。
「……ゆぅ」
志津香は、そっと手を伸ばした。
手がユーリの頬に触れるか否かの距離。このまま、想いを込めて。
……ユーリに、想いが伝わる様に……と、言葉では 自制心が邪魔をしてしまって 言い出せない。だからこそ、志津香はこの時本気で思った。いつもなら、言えないし行動できないんだから。
でも、それでも 今なら できるかもしれないし、言えるかもしれない。
あの時とは違うから。
あんなゲームじゃなく、本当の本気の気持ちを。
志津香はゆっくりとユーリの身体に触れようと手を更に伸ばしたその時だった。
“もぞっ……”
突然、衣擦れの様な音がこの静寂な空間に響いた。
微かな物音だったが、極限まで集中していた志津香の耳には、大音量に聞こえてきた。それは、まさに忍者顔負けの聴覚である。
そして、その音の発生源と思われる方向へと顔を向けたら……、そこにはもう1つのベ
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