月下に咲く薔薇 15.
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やらについてをな」
『皮肉なものですね、「揺れる天秤」』アイムが、奇妙な眼差しでクロウに呼びかけた。同情とも安堵ともつかない様子は、確かに世界の何よりもクロウを気遣っているように映る。『貴方の覚醒が半ばである事に、今は感謝をしておきましょう』
「別に嬉しくも何ともねぇがな」強い反発と共に悪寒を受け止め、再びはぐらかされた事に憤慨する。「だから!! どういう連中なんだ!? てめぇ、答える気が全然ないだろ!?」
その時、アイムが小声で呪詛を唱えた。邪魔をされた事を不快に感じる、それは短い罵倒の言葉だ。
『下を見なさい。業を煮やして現れたようです』
『何!?』
出撃中の機体と母艦の全てが、下と言われて滑走路に目をやった。
異変という表現は、奇妙さまでは伝えてくれない。
滑走路に、突然花園が湧いて出た。ズームをかけると、それがバラの群生なのだとわかる。
バラの株は急激にその数を増やしつつ、互いに絡み合って大きな塊と化した。半球を描き出す茎と花の塊だ。
『滑走路にバラ園なの? 何でバラ!?』
エニルの疑問は尤もだ。植物塊は5メートル、10メートルと高さも増し、半球が50メートルを越えたところでようやく成長は止まった。
鋼材のパイプで造ったオブジェ、そんな表現が異物の外観には最も相応しい気がする。いくら生命力に満ちた株でも、流石にトライダーG7サイズで空を目指しながら群生したりはしないだろう。こうなると最早、植物と呼ぶには無理がある。
棘の付いた茎で半球を成す塊には、時々真っ赤な花がついていた。しかし、絡み合う植物全体が大きすぎる余り、美しいバラも散りばめられている微細な点にしかなっていない。
その半球が、音を立てながら次第に曲面を失ってゆく。代わりに頂点に増量を始め、鈍角を形作った。
接地している部分もみるみるうちに安定感を増し、最後には重心の低い三角錐様のオブジェが出来上がる。
高さが70メートル超、複雑に絡み合うバラの茎で構成された植物製の三角錐だ。
『関係ないさ! バラなんて、こうしちゃえばいいのに!!』
シンが、デスティニーガンダム装備のビームライフルで三角錐を撃つ。
その一撃が、茎の塊に当たる直前で鮮やかな半球状の光に阻まれた。
「まさか…、Dフォルト!?」
『じゃああれって、次元獣でもあるの!?』
いぶきの言葉に、何人ものパイロットが攻撃を躊躇する。
もしDフォルトかそれに類するものを扱うのだとしたら、たかが植物塊という認識は改めなければならない。デスティニーガンダムのビームライフルと同等かそれ以下の火力しか持ち合わせていない武器は、エネルギーや弾を無駄にするだけだからだ。
『たとえ次元獣でないとしても、あの植物には我々の活動を妨害せんとする何らかの意図がある』前置きをし、ジェフ
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