くらすちぇんじ・まりあさま
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「あら、可愛い」
着込んだばかりの服を見下ろし、スカートの裾を摘んで一回転してみる。
膝丈の裾に花柄のレースをあしらった、薄紅色の袖無しワンピース。
胸元に大きめのポケットを二つ外付けした、長袖の白い上着。
膝上までを覆う白いストッキングに、飾り気が少ない赤い革靴。
昔とは素材が全然違うのか、湿気が籠るような肌触りは少し気になるけど。
金髪青目の美少女がこの衣装で赤い髪飾りを付けていたら、それはそれは素敵な画になりそう。
「現代の服飾品にはいろんな形があるのね。今まで一般人の服を着た経験はなかったから、ちょっと嬉しいわ。リースリンデにも似合いそうよ?」
着替え終わるのを待って、私の頭上にふわりと翔んできた小さな精霊。
私の全身を見下ろした彼女は、なんとも複雑な表情で浅く頷いた。
「装飾品に興味はありませんが、聖天女様にはよくお似合いだと思います。買ってきたのがベゼドラというところは、なんとなく微妙……ですけど」
「そうね。不機嫌が服を着て歩いてるみたいだったから、多少の嫌がらせは覚悟していたのだけど。この程度の皮肉で済んで良かったわ」
フィレス様達が本格的な行動を始める前。
私が着る為の服を一式揃えて欲しいとお願いした時に、ベゼドラが見せた壮絶なまでの苦々しい表情を思い出して、クスッと笑ってしまう。
今にも誰かを殴り殺しそうな凶悪な目つきで、子供の規格……
しかも少女向けの物を、下着も含めて買い求める、全身真っ黒な青年。
彼を見た瞬間の、店員さんの恐怖と疑念はいかほどだったか。
きっと、あらゆる意味で戦慄しただろう。
仕方ないとはいえ、双方に申し訳ないことをしてしまったかしら?
私が自分で買いに行ければ良かったのだけど。
「皮肉、ですか?」
きょとん、と瞬くリースリンデを手のひらに迎え。
反対の手でそっと頭を撫でる。
彼女には私の記憶を見せてないから、意味が解らないのは当然。
薄紅色は、私にとってたった一人……だった、今でも大好きな友達の色。
二度と見られない、懐かしいリボンの色。
あえてこの色を主体に選んできた辺りが、八つ当たり精神の表れね。
でも、本当に変わってるわ、ベゼドラ。
これは、ロザリアの件とは直接関係ないのだし。
断ろうと思えば断れた筈なのに。
ロザリア以外は心底どうでもいいから、やれと言われればやる、か。
どうでもいいから、全部を無視する。
とならないのは、クロスツェルの影響?
それとも
「確かに。動物の耳を真似て作った被り物を用意するなんて、とんでもない皮肉ですよね。聖天女様の頭に猫の耳を乗せるとか、ふざけてるわ。いえ、それもお可愛らしいですが」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ