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禁じられた舞台
4部分:第四章
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う言うのである。
「同じことを続けてもしない。今度はな」
「今度は?」
「革命を起こしてやる」
 何か変わったことがしたい種類の人間が使うことの多い言葉である。横紙破りこそが絶対の真理であると考えている人間の言葉でもある。
「演劇の場にな。やってやるぞ」
「革命ですか」
「マクベスだ」
 彼は言った。
「シェークスピアをやってやる。今度はな」
「シェークスピア?」
「鬼っ子だ、今度はな」
 続いてこんなことも言い出してきた。
「まあ任せろ。凄い作品にしてやるからな」
 打ち上げの場で早速大風呂敷を拡げていた。そのうえで酒と肴をしこたま腹の中に入れかなり酔って帰路に着くのだった。皆店の外でその後姿を見送りながら言うのだった。
「またやるつもりだな」
「っていうかもう構想には取り掛かってるんじゃないのか?」
 褒める口調ではなかった。彼の背中を見るその目も。
「全く。何でもかんでも己を通せばいいってもんじゃないのにな」
「確かに何も起こらなかったけれどな」
「ああ、それはな」
 皆それはわかっていた。練習の間もそれを映す撮影の間もそして上演の間も事故や事件の類はなかった。小さなトラブルが多少あった程度だがこれはどんなことをしても起こってしまうことであったので誰も特に気には留めていなかった。高山でなくともだ。
「とりあえず何もなかったな」
「そうだな」
「そうですかね」
 しかしここで若田部が首を捻って言うのだった。
「今日最終日ですよね」
「まあ打ち上げの日までがそうだからな」
「そうだな」
 丁度今日が最終公演だった。だからそうなる。

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