言の葉の不足分
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ですかな……南蛮では盗賊に身を落とすモノはいない、と?」
「当たり前だじょ! ミケもシャムもトラもみぃんな大家族なのにゃ! 皆一緒なのにそんなことするはずないにゃ!」
ふと、疑問が浮かぶ。何故南蛮大王は先ほどから三人と思われる名前しか呼ばないのか。
ぐるりと当たりを見渡して少女兵士達を確認して……星は絶句した。
余り気にも留めていなかったが、よくよく見れば少女兵士達には三種類しか居ないのだ。
人として生まれるのなら有り得ない事態。全く顔も姿も同じ人間がうようよいる。これほど恐ろしいことは無いだろう。
やっと気付いたのか愛紗も絶句していた。同じように気付いた兵士達からその気味悪さに後ずさった。
その怯えの空気を感じ取って、孟獲はふんと鼻を鳴らす。
「ほらみろ。お前らが悪いからお前らがびびってるんだじょ。
やいちびっこ! お前らが悪いって仲間が証明してるじゃにゃいか!」
「むぅ……なんで星も愛紗も黙ってるのだ……」
何故に星達が驚いたのか分からず、鈴々も当たりを見渡す。
別段、彼女は驚かなかった。神経が集中しているのは孟獲であって、他の少女兵士の見た目などどうでも良かったからだ。
立ち直った愛紗と星は互いに顔を見合わせた。驚きはしたものの、現在最優先にする事柄は南蛮王孟獲との情報錯誤であることは間違いない。
「いや、さすがにこれだけ同じ顔が並んでいたら誰でも驚くぞ孟獲殿。それよりも……」
「まだ言い訳するっていうなら――――」
どうにか話を続けようとするも、もはや通じそうにない。理知的に話が出来る相手ならば良かったが、孟獲たちはそうではなかった。
不機嫌を全面に押し出して武器を構え、大地に鼓動を伝えるかのように足を踏み鳴らした。
ケモノ耳を付けた少女兵士達も一斉に立ち上がり武器を構え、呼応するかのように足を踏む。
「生き残れたら命乞いと一緒に聞いてやるのにゃぁ!」
「「「にゃー!」」」
仲良くしたいと交渉をしたとは言っても、此処が森の中で彼女達の縄張りであることには変わりなく。何時如何なる状況でも戦場が開くことはあったのだ。
刃を交えるしか道は無い。そうでなければ殺されるだけ。いくら口で喚こうとも、話を聞かない輩も居るのだ。
「掛かれーっ! 突撃にゃー!」
「「「にゃー!」」」
駆け出してくる少女兵士達。
瞬時に戦場用に切り替わった脳髄は冷たい判断を下す。星も愛紗も鈴々も、自分達では足りなかった不足分を理解する。
躊躇いを持った愛紗も、悪を責めた鈴々も、冷静でいようとした星も、三人ともに非はあった。
桃香のように、白蓮のように、そして……黒のようには出来なかった。
もしかしたら違うやり方で、戦いなどしなくても解決出来た
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