言の葉の不足分
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馬を進め、兵を纏め、斥候を放ち……軍として行軍していくことまた幾分。異様な熱気にいつものように感覚が鋭く働かない。怯えたケモノ達の気配に気を取られることもあった。ざわついた森は静かとは言い難く、細心の注意を払っていたとしても普段より行軍の質が少しばかり劣る。
だからだろう。森の中での突然の襲撃に彼女達が一歩遅れたのは。
「にゃぁぁぁぁぁぁ!」
殺気に鋭さは無かった。バカ正直に繰り出されたその攻撃は、木の上から声を上げて真っ直ぐに振り下ろされた。
先頭を進んでいたのは三人。二つ名付きで呼ばれる将が並んでいたのは運が良かったと言っていい。一寸驚くも、三人が三人ともそれぞれ反応し……その一撃を三人で受け止めた。
炸裂する轟音は鈍い金属音を上げて。
槍と偃月刀と蛇矛を重ね、その大型武器を受け止めた。一撃によって痺れる手、その力から只者では無いと瞬時に把握した。
敵からの攻撃は不意打ちの類。武人としては褒められたモノでは無い。
というより、軍を進めているとは言っても護衛の為を兼ねてであり、まず大前提として争いをしたいわけでは無いのが劉備軍のスタンス。まずは面と向かって言葉を交わそうと思っていたのも不意打ちを許した理由かもしれない。
三人が払いのけると、敵はくるりと宙を一回転して彼女達の眼前に立ちふさがった。街道の真ん前に立つ一人の少女を見つめてみる。鈴々と同じくらいかそれ以下にしか見えないが、その鈴々こそが幼子であれど飛び抜けた武を持つやもしれぬことへの証明である。
気迫と気合を込めた心は研ぎ澄まされ、三人が目の前のモノへの警戒を最大限に引き上げた。
「中々やるにゃぁ。美以の一撃を防ぐなんてびっくりしたじょ。ふむふむ、ちょっと美以だけじゃ三人相手はきつそうだにゃ……お前達っ!」
森の草木が揺れる。そこかしこに現れたのは少女の群れ。年端もいかない少女達が武器を持って兵士達を囲んでいた。
罠だと気付いた時にはもう遅い。気配もなくどうして、と愛紗は思うも、此処は敵の庭のような場所なのだ。細作を出していたと言っても帰ってくる前に襲われればその意味もない。
睨みつけながらも思考は巡る。ただし、愛紗の頭にじわりと困惑が渦巻く。
――しかしなんだ? 何故ここには……少女しか居ないのだ。
見渡す限りに少女ばかり。愛くるしい見た目でふにふにの肉球を付けた彼女達の様相に兵士達も戸惑いを隠せない。
鈴々は廻りを威圧しながら睨みつけ、星は何やら思考に潜っている様子。対面的には見せていないが、一番動揺していたのは愛紗だった。
「ふむ……幼女だらけの軍、というわけか。どうりで敗北した兵士達が語りたがらぬはずだ。幼子の集団に負けたとあっては二度と戦えまい。それ以前に、幼女が群れを成して大の
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