暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
GGO
〜銃声と硝煙の輪舞〜
訳知り顔で夕焼けを
[2/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
残されたミラ達には生活保護という目的で定期的に金が政府から卸されていたし、何より彼女の資産が思ったよりまとまった額が残っていたのだ。

ピースは完全に揃っていた。戻って来た彼女の呻き声が聞こえるくらいには。

しかし、安っぽい悪の道に走るほど根性はねじ曲がっていなかったミラにとって、唯一の解放された部分は主に勉強方面だった。

生来、ひとところに留まるということが苦手なミラは、とかくスクールを抜け出しては教師に捕まっていた。

ここで断っておくのは、ミラは別に頭が悪い訳ではない。ただ椅子に座ってジッとしているという行為が自分にとってとんでもなく苦痛だった、というだけの話だ。

そんな彼女にとって、違う言語圏に行くということはそれ相応のリスクがあった。

外国人など、万能道具(ツール)ゼスチャーを用いれば大丈夫だ、と堂々と胸を張ったら真正面から思いっきりゲンコツを喰らった。海軍仕込みの一撃は下手したら頭蓋骨陥没するかもしれない。馬鹿になったらどうする、と言うと、これ以上馬鹿にはならないだろ、と返された。

割と正論だった。

ともあれ、転属はミラが日本語を覚えるまで待ってくれるはずもなく。

簡単な挨拶程度しか覚えていない状態で、我が家は空を飛んだ。

着いたオキナワというところは冬だというのに寒くなく、改めてこれまで過ごしていたノーフォークとは違う土地なのだと言外に伝えてきていた。

お人好しな彼女がやっぱりというか案の定心配した、してくれた友達もすぐにできた。ただし、日本語を話せる連れ子を通して、である。遊びに誘いにくいことこの上なかっただろうが、しかし転校先の子達は積極的に親交を持ってくれた。

ゲームで日本語を覚えていかないか、と言われたのは、いつだったろう。

何か気付いたら、まさに彼女が二年間もほっつき歩いていた世界と同じような世界に入っていた。

半ば当初の目的も忘れ、没頭した。

楽しかった。

これといった趣味がまったくなかった自分としては、これが人生で初めて、心の底からのめりこめたものだったと思う。

そのあまりの熱中ぶりに彼女は溜め息を凝らしながらよく愚痴っていた。

平和になったもんだ、と。

彼女が二年間も閉じ込められていたデスゲームの全容を、ミラはよく知らない。いや、あえて知ろうとしては来なかった。

開始一ヶ月で二千人が死んだ、という悲劇的な惨劇のニュースを聞いたは聞いたが、正直真正面から受け止めるにはいささかキャパシティー不足だというものだ。ただ、その中に彼女が入っていなければいい、と生まれてこの方一度も頼ったことのないカミサマとやらに祈っただけだ。

一度あたしの命救いやがったんだから、ついでにもう一人助けろください、と。

身勝手に。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ