第3章 黄昏のノクターン 2022/12
21話 黒の薬師
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「へぇー、あの木ってそんな名前………なに?」
ティルネルが木の名前を教えてくれたことで、木の実のほうは《フルスの実》というアイテムなのか、などと推測していると意外な疑問が浮き彫りになる。
「ティルネル、あの木を知ってるのか?」
「知っているも何も、私は薬師ですから。薬の原材料になる植物の名前は大抵わかりますよ?」
自慢気に胸を張るティルネルを視界の端に捉えつつ、そう言えばそうだったと思い出す。ティルネルのモンスターとしての固有名は《Tilnel:Dark Elven Pharmacist》。ダンジョンでは弓と剣――――クーネの影響かは定かではないが、とにかく片手剣を扱えるという事でドロップ品を持たせた――――を駆使してポジションを問わぬ活躍を見せる黒エルフのお姉さんは、本来は黒エルフ族に連綿と継承されている神秘のお薬の調合や処方を生業とする職種なのだ。正直、本人の口から語られるこの瞬間までその設定を忘れていたが、これについては彼女の名誉のために口を噤むこととしておこう。
「ということでリンさん、フルスの実を落として下さいますか?」
「え………あ、はい?」
言われるがまま、手近な石ころを一つ摘まんで投げる。投剣スキル単発技《シングルシュート》のモーションで放った礫は直線的な軌道でピンク色の実を落とす。よく見ると平たく中央に穴の開いたリング状の実をティルネルは満足そうに回収して、それを今度はヒヨリに渡す。デザインが琴線に触れたらしく「燐ちゃん、コレすごい可愛い!」と騒ぎ出すのをティルネルがそれとなく宥め、話を再開する。
「では、今度はヒヨリさん。この《へた》を咥えて息を強く吹いてみて下さい」
「こ、こうかな………ふみゅッ!?」
そして、言われるがままに従ったヒヨリは、突然弾むような音と共に膨張したフルスの実に顔を埋める形で静止。女の子としては避けたいであろう哀れな姿を晒す。そしてそのあまりに衝撃的な光景は言わずもがな、端から見ている俺をも驚かせた。ティルネルは一人だけ何故か自慢気な表情で悦に入っているが。
「………おお、膨らんだ」
「びっくりして死んじゃうかと思ったよ………」
「このようにフルスの実には、萼に生物の息に含まれる成分が一定量触れることで、果肉が成熟して膨らむ特性があるんです。主に鳥が実を咥えて移動する際に果実を遠くに落とさせる手段だったり、そのまま水流に浮いて自ら流れて移動することも想定された形ですよね。私は昔、よくこの実を使って姉様と水遊びをしてました」
「なるほど、生息圏を拡大するために独自の進化をしたわけだな?」
「リンさん、模範回答です!」
何故か褒められ、突如始まったティルネル先生の理科の体験授業は
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