思い出-メモリーズ-part2/妖精の歌
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だけ世界中から音というものが消えたような気がした。母が、文字通り殺された瞬間だった。
だが、ティファニアに更なる恐怖が襲い来る。自分が隠れているクローゼットに、王軍が忍び寄っていた。
しかし、この時不思議な現象が起こった。風のルビーからエメラルド色の光が輝き、オルゴールから音が鳴り出した。綺麗で、懐かしい感じがした。さらに不思議だったのは、その音はティファニア以外の誰にも聞こえなかったということだった。その音の旋律に合わせ、彼女は一種のトランス状態を発症したかのように、父の杖を指揮棒のように振りながら呪文を唱えた。
ナウシド・イサ・エイワーズ…
ハガラズ・ユル・ベオグ…
ニード・イス・アルジーズ…
クローゼットが開かれ、彼女は目を開くと同時に魔法を発動した。
「ベルカナ・マン・ラグー!」
霧がかかったように、空気が白く澱んだ。兵たちはクローゼットを開いた瞬間、テファの魔法を受けて怯んだ。
「…あれ?俺たち…一体…」
後にティファニアが『忘却』と呼ぶ魔法の、初実践だった。
(今の魔法って…いったい…?)
呆然としている兵たちを見て、自分でも何をしたのか、テファはわからなかった。
実を言うと、テファは魔法の学習もある程度はこなしていたが、系統魔法は一切使うことはできなかった。ルイズと同様、起こるのは小さな花火のような爆発だけ。でも、今確かに…それも基本的な魔法や学習した系統魔法でもない、未知の魔法だった。
いや、考えている暇はない。今のうちにと、テファは走りだした。自分がなぜここにいるのかもわからなくなって呆ける兵たちを尻目に、母親の遺体を見ることなく、彼女はガムシャラに走った。屋敷を抜け、敷地の庭へ飛び出す。
しかし、エルフはたった一人を倒すにはメイジが千人以上かからなければならないと言われるほどだった。部屋になだれ込んだ程度の数の兵だけでなく、表には部屋にやってきた兵たちの何倍もの兵たちが立ち塞がっていた。
「いたぞ!」
ティファニアを殺そうと襲ってくるアルビオン兵士たち。またしても取り囲まれてしまったテファ。さっきの魔法を唱える隙も与えられないだろう。絶体絶命のピンチに陥った。
背後には、急な流れの川が流れていて、当時泳ぎの経験がなかったテファにとって地獄行きの扉のようにも見えた。
ここまできて、もうだめだというのか。父と母が命をかけてまで自分を逃がしてくれたというのに。エルフのみでありながら母が毎日祈り続けていた始祖ブリミルは、所詮エルフの祈りなど聞き届けてくれないというのか。
ふと、テファはポケットに大きな硬いものの感触を覚える。取り出してみると、それは父の屋敷で暮らしていた頃、一緒に遊んでくれた『彼』がくれたどんぐりだった。
テファは、どんぐりを両手で握り締めて必死になって叫んだ。すると、彼女のどんぐ
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