思い出-メモリーズ-part2/妖精の歌
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さあ、行け!」
「あなた、待ってください!」
「お父さん!!」
シャジャルとティファニアは、サウスゴータとその部下に無理やり屋敷から連れ出された。
「…幸せになれ、娘よ」
それが、ティファニアが最期に聞いた父の、心からの言葉だった。
その後、モード大公は王軍にひっ捕らえられた。牢獄に繋がれ数日後、彼は獄死した。
父の死はやがて隠遁先のサウスゴータにも及んだ。エルフがアルビオンにいるということで、すでにアルビオンの各港は封鎖されてしまい、国を出ようにも出られなくなってしまった。
大公の死を嘆く間も与えられず、王軍の追っ手がサウスゴータの屋敷にも及んだ。この時、すでにサウスゴータは娘のマチルダが巻き込まれることがないよう、彼女を先に脱出させ、自分はせめて恩人の敵討ちのために一矢報いようと、賛同した者達とともに王軍に立ち向かい、処刑されサウスゴータ家の取り潰しが決定されていた。
地球にとって救世主イエス・キリストが降臨した日が『クリスマス』と言われているように、ハルケギニアでは始祖ブリミルが降臨した日を『降臨祭』と呼ぶ。その降臨祭の日、屋敷を囲む軍が、屋敷へとなだれ込んだ。もう逃げ場はなかった。
覚悟を決めたシャジャルは、モードから託された風のルビーとオルゴール、そしてモード大公の形見の杖をティファニアにあずけ、彼女をクローゼットの中に入れた。
「いいですか、ティファニア。私はこれから、国王陛下の軍の方々と話をつけてきます。決して物音一つ立ててはなりませんよ?」
「お母さん…」
「しっ!ではティファニア……どうか無事で、生きなさい…」
シャジャルは唇の前で人差し指を立てて、すぐにクローゼットの扉を閉めた。シャジャルの姿を見たのは、それが最期だった。
テファはそうなるとも知らず、母から託された風のルビーを無くさないように右手の中指にはめた。扉の向こうから、ドタドタと誰かが大勢入ってくる音が聞こえてきた。その音を聞いたクローゼット内のテファは、震えながら杖を握り締めていた。
「いたぞ!例のエルフだ!」
「気をつけろ!『先住魔法』で俺たちを皆殺しにするかもしれない!」
兵士たちが声を荒らげている。国全体がエルフを敵視するブリミル教徒であるため、やはりシャジャルが恐ろしい存在に見えていたようだ。
しかし、シャジャルは自分に明らかなる敵意を向けている兵たちを前にして、何もしてこなかった。ただ彼らの前に立ち、必死に自分は危害を加えるつもりはないと訴えていた。
「なんの抵抗もしません。私たちエルフは、争いを望みません」
だが、エルフを過剰に恐ろしく見る、王の命令には逆らえない、隙だらけの今のうちならば恐ろしい魔法を使う化物を倒せる…自分にとって都合のいい選択を取った兵たちのとった行動は、攻撃魔法による返事だった。
テファは、その時一瞬
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