序章
妖精の尻尾 《前》
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竜といえば凄い火の魔法を使う魔導士として有名だ。その名前を知らない魔導士はまずいないだろう。ルーシィとて魔導士の端くれ、当然知っている。
「何かと思えばそんな事か……オレ達には関係ないし、別の道を…」
ど真ん中で人混みを作られては通れない。そう判断したニアが騒ぎから目を離し、左隣を歩くルーシィに目を向ける、が。
「凄い人気ねえ……かっこいいのかしら」
「あ、おいっ」
「ちょっと見てくるだけ!!ここで待ってて」
金髪の後ろ姿は、気づけば人混みに近づいていく。少しの間ぽかんとするニアにひらりと手を振って、ルーシィは女の子達の中に紛れていった。
その姿が完全に見えなくなるのと同時に、深い溜め息を1つ。
「どうせ大した魔導士じゃないだろうに…こんな街中の道のど真ん中で愛想振りまくんじゃねえよ邪魔臭い」
そう言いながらも、その足は人混みへと向かっていく。
そしてこちらは空腹だった。
「列車には2回も乗っちまうし」
「ナツ乗り物弱いもんね」
「ハラは減ったし……」
「オイラ達お金ないもんね」
食事云々の前に一体どうやって帰るつもりだったのかが謎だがそれはさておき。
先ほどまでの酔いがまだ若干残っているのか、よたよたと歩きながらナツは言う。
「なあハッピー、火竜ってのはイグニールの事だよなあ」
「うん、火の竜なんてイグニールしか思い当たらないよね」
「だよな」
どうやら火竜を探しているようだった。少女だけでなく少年から探されるほどの魔導士なのだろうか。
問いかけにハッピーが頷くと、ナツは握り拳を突き上げる。
「やっと見つけた!ちょっと元気になってきたぞ!」
「あい」
声に明るさが戻ってきた。探していた相手の発見に笑みを浮かべ、さてどこにいるのかとあちこちに視線を走らせる。
港町というだけあって、漁師やら商人やらを始めとして人が多い。今ナツ達が歩いているのはまだ人が少ない方の道だが、すぐ近くが大通りだからか沢山の人の声が響く。それも何やら少女の声が多いような……?
「!」
黄色い歓声、という言葉をそのまま目に見える形にしたような光景だった。
数えるのも面倒そうなほどの人数の少女やら女性やらが、大通りの中央辺りで人混みを作っている。きゃあきゃあと上がる声の中に混じった「火竜様〜」の歓声を、ナツは聞き逃さなかった。
「ホラ!!噂をすればなんたらって!!」
「あい!!!」
甲高い悲鳴の中心は男性だった。
紺に近い色合いの髪は左側に流れるようなヘアスタイルで、額右側にXを上と下からぺしゃんこにしました、みたいな刺青を入れている。船の舵に似
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