序章
妖精の尻尾 《前》
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か」とだけ返して店内の雑誌を適当に取ってパラパラとめくり始めた。
ルーシィは満面の笑みのまま店主に近づき、表示されていない値段を尋ねる。
「いくら?」
「2万J」
……ルーシィ停止。ニアも雑誌から目線を上げる。
「お・い・く・ら・か・し・ら?」
「だから2万J」
ひたすらにっこり笑顔で問うが、店主が示す値段は2万Jのまま変わらない。ルーシィのしたい事を悟ったらしいニアは密かに苦笑いを浮かべるが、2人には全く気付かれなかった。
こうなれば仕方がない。本当は使いたくなかったが―――――やるしかない!
「本当はおいくらかしら?ステキなおじさま」
「ちぇっ、1000Jしかまけてくれなかったー」
結局、ルーシィの秘技“お色気作戦”は微妙な結果となった。
自分の胸を寄せて上目遣いをし、頬を薄い赤に染め、甘い声で値切ってみた結果、確かに値切ってはくれた。その額が然程大きくないというだけで。
「あたしの色気は1000Jか―――っ!!!」
苛立ちを隠さずに近くの店の看板を蹴る。ガコッと派手な音に驚いたのか、散歩中の老人がびくっと震えた。
と、その横を歩いていたニアが溜め息をつく。
「……あのなあ、それだけでも値切ってもらえただけマシだと思えよ。オレが店主だったら1Jも値切らないだろうし」
「そうね……って、つまりあたしに色気がないって言いたいの!?」
1度は聞き流しかけたものの、よく考えればそういう意味合いであり。
噛みつかんばかりの勢いのルーシィをあしらうように宥めながら、ニアの口元がニヒルな笑みを描く。
「どう思うかは人それぞれだろ?お前みたいなのを好む奴もいれば、色仕掛けを毛嫌いする奴もいる。で、オレは後者に近い」
「近い…って事は」
「人によるって事だよ。生憎、オレの好みは年上なんでな」
そう言って肩を竦め、「それより」と呆れ気味の声で問いかける。
「さっきから気になってたんだが、あれは何の騒ぎだ?」
「え?…何かしら」
ニアが指差す先、大通りの真ん中。明らかに通行の邪魔になる位置に、何やら人が集まっていた。しかも集まっているのは若い女の子ばかり。きゃあきゃあと黄色い歓声を上げながら、首を捻っている間にもどんどん増えていく。
「この街に有名な魔導士様が来てるんですって」
「火竜様よ――っ!!」
文字通り目をハートにして駆けて行く女の子達。そんな彼女達が口々に叫ぶのは、共通して火竜の名前と有名な魔導士だという事ばかり。
「火竜!?あ…あの、店じゃ買えない火の魔法を操るっていう…この街にいるの!?」
ぱん、と手を叩くルーシィ。その顔には笑みが広がっている。
火
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