序章
妖精の尻尾 《前》
[14/17]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
至極真面目な顔で言ったニアに噛み付く。彼はやたらと無駄な一言が多い。
いつもの癖でツッコんでから、ルーシィは頭にその名前を思い浮かべる。それだけで笑みが広がって、溢れる喜びに似た感情を噛みしめるように呟いた。
「魔導士ギルド妖精の尻尾。最高にかっこいいなあ」
「へえー……君…妖精の尻尾に入りたいんだー」
「!!!」
ガサッ、と背後で音がした。
まさかニア以外に聞かれているとは思わなかったルーシィは驚きながら振り返り、茂みから姿を現した相手を見て更に目を見開く。ニアが「うげ…」と嫌そうな声を全く隠す気なく零していた。
「サ……火竜!!?」
そう。
現れたのは、先ほど街で女の子達に魔法の力でちやほやされていた火の魔導士。魅了が効かない今となってはどこに惹かれたのかすら全く解らない男。
額の入れ墨にマント姿の、火竜と呼ばれる魔導士だった。
「いやー、探したよ……君のような美しい女性を、ぜひ我が船上パーティーに招待したくてね」
「は…はあ!!?」
「……」
ガサガサと茂みを揺らしながら近づいてくる火竜が距離を詰めていく。
何を言っているんだと驚くルーシィの後ろで、立ち上がる気配と音がした。
「…悪いが、お前のような男の誘いに乗る気はない。それと残念だが魅了は効かないから、魔法でどうにかしようなんて阿保みたいな考えは捨ててしまえ。いっそそんな考えが浮かぶ腐った脳ごと捨てればいいとオレは思うけどな」
冷たい声をいつも以上に冷やしきって、更に棘を仕込めるだけ仕込んだような声色で彼は言う。
反射的に振り返った先、被ったフードと眺めの前髪の奥の瞳が軽蔑するような色を持って火竜を見据えていた。
「き…君、失礼じゃないのか?第一僕は君に用なんて」
「連れが妙な誘いを受けそうになっている状況で口を挟むなと?阿保かお前は」
ぴしゃりと返された言葉、特に阿保の部分にショックを受けたらしい火竜の動きが止まる。彼と長く接していれば、彼が「阿保」と口にするのは日常茶飯事なのでわざわざ気にする事でもないのだが、初対面でそうはいかないらしい。
この隙を、ルーシィは見逃さなかった。鞄を肩にかけ、火竜を指さす。
「ニアの言う通りよ。あたしに魅了は効かない。魅了の弱点は“理解”…それを知ってる人には魔法は効かないんだから」
突きつけるように言うと、それで火竜は調子を戻したのか笑う。
「やっぱりね!目があった瞬間魔導士だと思ったよ。いいんだ、パーティーにさえ来てくれれば」
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ