遭遇-コンタクト-part2/もう一人の巨人
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この風呂場の環境は平民の自分にはもったいないくらいの設備だった。しかし、彼女は風呂に入って気持ちが晴れることはなかった。寧ろ…。
「シエスタさん、伯爵がお待ちです。早くおあがりください」
屋敷に仕えるばあやが、風呂の外から声をかけてくる。とりあえずはい、と答えたシエスタ。その表情はすぐに沈みきったものになる。
「サイトさん…」
ポツリとサイトの名をつぶやいた彼女の目から、小さなしずくが湯船に流れ落ちて溶け込んでいった。
だが、危機が迫っていたのはサイトだけではなかった。さきほど上がるように知らせてきたばあやが、まるで童話に搭乗する魔女のような気味の悪い笑みを見せながら、自分の腕を舐めとっていた。だが驚くべきはその異様な仕草以上に、皮膚のない膨れ上がった筋肉に何十センチもなびきっている鋭く鋭利な爪。彼女の腕が、見るからに人間のモノではなかったことだった。彼女は、入浴しているシエスタの元へ抜き足差し足と、静かに近づいて行った。
サイトはその時、屋敷から外に出て門をくぐろうとしたところで、伯爵の屋敷に仕える衛兵たちに取り囲まれてしまった。
「相棒、俺を抜け!」
「!?」
「悪く思うなよ。これは伯爵様からの命令だ」
兵の一人が、人のそれとは思えない下種な笑みを見せた。サイトは今すぐに、あの伯爵に意趣返しをしてやりたいと言う衝動に駆られた。あの髭親父、最初からこっちの約束を守る気もなかったと言うのか。デルフを引き抜いたサイトの左手が、ギーシュの決闘の時と同様青く光り輝く。体が軽く感じた。このルーン、剣を握ると光るようになっているのか?
「ふ!」
流石に本気で斬るわけにはいかない。峰打ちでいこう。サイトはデルフの峰を相手に向け、目には止めきれないほどの速さで剣を振った。一人の衛兵がそれをこめかみに食らって昏倒する。続いて別の兵が槍を突き出してきたが、サイトはそれを飛び越え、頭上からデルフを振り下ろして、相手の衛兵の脳天に峰を叩き込む。兵の中にメイジはおらず、ほぼギーシュと戦った時のような展開だった。時に相手の武器をたたき割り、時には相手の顔を殴り飛ばしたりして圧倒していたのだが、サイトは何か奇妙なものを感じる。気絶するだけのダメージは与えているはず。なのに、誰一人として倒れようとしなかったのだ。
「変だ…こいつら全く倒れやしないぞ!」
「見ろよ相棒。こいつら、目がおかしい」
デルフがそう言うと、サイトは彼に言われた通り敵の兵士たちの目を見る。目の焦点が、合っていない。まるで麻薬に手を染めてしまったせいで頭がおかしくなってしまったかのように目がイってしまっているのだ。サイトは彼らに対して薄気味悪さを覚える。
まるで死人じゃないか。すると、ゼロがサイトに警戒心を露わにした声で語りかけてきた。
『サイト、こいつ
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