遭遇-コンタクト-part2/もう一人の巨人
[2/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いた。
「伯爵様!どうかこの方をお許しくださいませ!代わりに私がどんな罰もお受けします!どうか!」
サイトが来訪したと聞いて、扉の外で聞き耳を立てていたのだ。しかも伯爵がサイトに杖を向けた途端、いてもたっていられず、無礼を承知の上で伯爵にサイトを助けるよう懇願しに来たのだ。自分のためにサイトが傷つくことになる。それが耐え難かった。
「シエスタ!退いてくれ!」
サイトが叫ぶ。すると、平民を相手にムキになり過ぎたと彼なりに自省した伯爵は杖を下げた。
「…ふう、ならば条件を付けようではないか。平民よ」
「条件?」
伯爵の言葉にサイトが目を細める。
「実は私は書物集めを趣味としていてな、貴重な本となると喉から手が出るほどほしいのだ。そこで、貴様にはある本を持ってきて私に渡してもらいたい」
「なんですか?」
「ゲルマニア貴族が家宝として大事にとっておいているとされる本があるというのだ。それを持ってきたのならば、シエスタを返してやろう」
「そんな!」
いくらなんでもそんな当てのないものを探しに行けと!?
「相棒。ここはいったん引け。あまりことを荒げちまうとメイドの嬢ちゃんにも迷惑を駆けちまうことになるぞ?」
「…約束は守ってくださるんですよね?」
デルフがサイトに声をかけて彼を落ち着かせると、サイトは深呼吸した後、伯爵に尋ねる。
「私は貴族だ。嘘は言わんよ。期限はとらぬ。いつでも持ってくるがいい」
サイトとしてはかなり難易度の高い条件だとは思ったが、デルフの言う通り、あれだけえばる貴族がチャンスをくれただけまだましだ。
渋々ながらも納得したサイトはいったん伯爵の屋敷を後にした。
「全く、せっかくの楽しみを邪魔するとは野暮な平民よ。さてシエスタ、お前は湯あみをしてくるがいい。今夜の相手、務めさせてもらうぞ?」
部屋を出たサイトを見て、フンと鼻息を飛ばすと、伯爵はシエスタに顔を近づけてそう言った。断ることは許されない。シエスタに許された言葉は、たった一つだけだった。
「…はい」
シエスタが去ると、伯爵は部屋に置いてあるハンドベルを鳴らすと、雇っていた兵の一人が彼の部屋を訪れた。
「シエスタが湯あみを澄ませるまでの間、あの小僧を始末しておけ」
なんということか。貴族として約束は守ると言っておきながら、伯爵はサイトを殺せと命じたのだ。ゲルマニア貴族の家宝…まあ持ってきてくれたらそれはそれでありがたいと伯爵は思っていたが、そんないかにも貴重そうな物品を平民が持ってこれるはずもない。まして無礼を働く生意気な平民、だったら見せしめに殺して、他の平民が逆らわぬようにしてやろうと言う悪辣な魂胆があった。
そんなことも知らないまま、伯爵に命じられるまま、シエスタは風呂に入っていた。貴族御用達なだけあって
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ