王都-トリスタニア-part2/傲慢なる戦士
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えられながら席から立ち上がると、会議室の壁に掛けられた、十字架の光を刻み込んだマークを描いた旗を指さし、ウェールズに向かって言い放つ。
「…ウェールズよ、我らは国以上に、この世界すべてのことを考えて行動せねばならん。我が国アルビオンは、始祖のお与えくださった血と力だけではない。もう一つ同じようにこの世界のために守っておかなければならないものがあるのだ。
これ位の事件で自らの命を危険にさらすような真似をするでない」
「…!!これくらいとか、そんな言葉で、民の命を量るとは…父上!それでも誇りあるこのアルビオンの王ですか!」
その言い方が、まるで大を生かすために小を斬り捨てることをいとわない。そう言わんばかりの言葉に聞こえた。ウェールズは父の言い方に憤慨した。彼の剣幕は、その気迫のあまり会議室を一気に静まり返らせた。
「…申し訳ない。しばらく席を外します」
自分一人、興奮したことに気づいた彼は、この場から一度立ち去ることにした。
「皇太子様…」
心配そうに、重臣たちはウェールズが去って行った扉をじっと見つめていた。
「…私とて民の命が脅かされるのを黙って見過ごせるわけはないが…言い方が不味かったか。あやつには、もっと大きな役目があるとはいえ…」
自分の言い方が息子には失言に聞こえたことにアルビオン王は、自分の本当の思いをどうやればうまく我が子に伝えられることができるのだろうかと悩んでいた。
アルビオン王がかたくなにウェールズの調査部隊への加入を拒んだことには、彼が大切な世継ぎであり息子でもあるからだけではない。
実は、このアルビオン王家には、あるもう一つの大きな秘密が隠されていたのだ。
ハルケギニアの城というものは王族という存在にとっては政治を執り行うための仕事場でもあるが、たくさんの家臣にとってもそうであり、同時に政を行う者とそれを支える家臣たちにとっての家のようなものでもあるから、気が遠くなるような広さを誇る。会議室から離れた場所にある、城のバルコニーにたどり着くのも時間数としては少々だが、家の中をうろつく時間としては多少時間がかかる。
そこに出たウェールズは、いつになく熱くなりすぎた自分を落ち着かせるためにふう…と息を吐いた。ここで働く者たちは仕事優先傾向にあるため、この辺りはあまり家臣たちも来ない。ウェールズが一人で落ち着きたい場所としてはちょうどいい場所だった。
アルビオンは、四代系統の中でも存在そのものが主に風に因んだものがある。その証拠のごとく、風はどこの国よりも優しく、遥か彼方まで流れていく。
自分は一体どうすればいいのだろう。ただいつか訪れるかもしれない即位式のためにのうのうと生きていればそれで皇太子としての務めが果たされるというのだろうか?いや、そんなわけがない。自分も何か成さねばな
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