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フリージング 新訳
第34話 Goodspeed of the East2
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覚えないのはただの馬鹿だ。格上と感じたのもうなづける。

「貴方の名前は?」

キャシーが微笑みながら聞いてくる。思い返せば、ゼネティックスに来てから何のわだかまりも無い戦闘をするのは始めてかもしれない。
グラディウスを握り直し、剣先を相対しているキャシーへと向けながら、名乗りを上げた。

「ウエストゼネティックス所属。一学年ランク外。アオイ・カズト」

まるで獣のような獰猛な笑みを浮かべて、剣を振り絞った。

「行くわよ。カズトくん」
「こい、イーストの神速」

それ以上の言葉などいらない。必要なのは、ここから先を決するのは、響きあう剣戟のみ。
走り出す二人の姿は、まるで夜空を舞う星屑のようだった……


***************


「ここに、俺様の嫁になる資格のある奴がいるのか?」

某所。とある青年がたった一人で誰かに話しかけていた。顔立ちは整っているが、どこか軽薄そうな雰囲気を纏っている。その装いも金髪にチャラチャラとしたチェーンがつけてある。

『ああ。王よ。ここにならば貴公の気にいる人間がいるだろう』

誰もいないと思った瞬間、何もなかった空間に大柄なシルエットが現れた。現代人が着ているとは思えないような、古くさいローブを纏った老人だ。

「はっ。まぁ、俺様のメガネに見合う奴がいたら、無理矢理にでも連れてってやるさ」
『……それに何かの意味があるのか?』

無理矢理という部分に何かが引っかかったのか、老人は眉をひそめてチンピラ風の青年へと問いかける。

「当たり前だろ?俺様の思い通りになるからこそ存在する価値があるんだよ。それ以外に価値なんてねえ。クソだ。俺様こそが至上で、俺様がこの世界に転生したのも運命。この世界は俺様の為にあるんだよ」

全く理にかなっていない子供の言い分。それを聞いて、老人は呆れ返るようにため息を吐く。

『貴公がそれで良いならそれでも構わん。だが、契約は守ってもらう。必ずや……』
「わかってるっつの。“もう一人の転生者”だろ?所詮は踏み台。特典も与えられなかったんだ。この俺様の……」

青年が言いかけたところで、その背後に無数の金色に輝くゲートが現れ、両眼が青と赤の螺旋状に輝く。

「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)と、直死の魔眼が負けるかよ」

そう言って、青年は姿を消した。一人取り残された老人は忌々しいと言うかのように鼻をフンッと鳴らした。

『せいぜい、借り物の力ではしゃいでいるといい。蒼城狼牙。貴様が使えなくなるまではな……』

そう呟き、老人も姿を消した。全てを見通すその目に写っていたのは、終始自らが転生させた物ではなく、忌まわしい女神の選んだ転生者の姿だった。

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