プロローグ
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していき、二メートル四方ほどの舞台を作り上げる。
そこから、どぷん、と波を立て、せり上がって来たのは──十字架、だった。
十字架には、磔にされた誰かがいる。そこに縛られていたのは、銀色の髪をした少年。
「やあ、天塚神」
癖毛の少年が銀色の少年の名を呼ぶ。すると彼は、弾かれたように顔をあげ、圧倒的な憎悪を込めて、癖毛の少年を睨み付けた。
「て……めぇ……ッ! 分かる、分かるぞ……姿こそ違うが、あのときの……ッ!」
「口を慎め、囚人。神の御前であるぞ」
「がっ……!」
叫ぶ少年は、しかし青の少女がその左手を振るうと、唐突にもがき苦しみだした。
彼の体には今、激痛が走っている。青髪の少女が有する『管理者権限』を以て、その肉体と精神に直接ダメージを与えられているのだ。
「うーん、流石にノイゾは鬼畜だねぇ。やはり看守としては一流だ」
「勿体無いお言葉にございます」
「てめぇら……俺を、無視すんじゃ──」
「黙れ」
「がぁぁぁっ!?」
またものけぞる少年。この辺りで、癖毛の少年が笑い始めた。
「あっはっはっは。形無しだねぇ。あれだけ世界の勇者たちを苦しめたキミが、今やたった一人の存在にも勝てないわけだ」
「だ……まれ……」
しかし激痛の中でも、少年は癖毛の少年神を睨み付け続ける。確かな憎悪。底無しの怨念。それは奪うはずだったモノが奪われたことによる反逆心──
「いいね。その意気やよし、だ。気に入ったよ、天塚神」
「何……?」
少年神が、ぱちん、と指をならす。下手なのか、少し腑抜けた音がしたが気にしてはいけない。
同時に銀色の少年を縛っていた十字架が消滅し、彼はどさり、と地面に落ちた。
「キミを自由にしてあげよう──」
「……シッ!」
少年神が言い終わる前に、銀色の疾風が駆け抜ける。癖毛の少年の顔に向かって、握りしめられた拳が、神速を以て振りかぶられ──
「ただし、条件付きで、ね」
バチィッ! という不快な音と共に、半透明の紅蓮い障壁に阻まれた。
「ガラディーン」
「はい、先輩」
白い少女の隣にいた、あの癖毛の娘が銀の少年を見る。するといかなる原理か。ざくり、と奇怪な反応と共に、刀傷。鮮血が舞う。少年は、吹きとばされる。
「ぐがっ……!?」
「キミにはその痛みが呪いとなる。ガラディーンは僕のもの。つまりはその傷は僕と繋がっている。僕と繋がっているということは、僕の命令をきかなければキミには自由に罰を与えられるということだ」
言っておくけど、と、少年は前置き。
「僕、拷問とか懲罰とか、そういう範囲の狭い断罪、えらい苦手だから──きっと、『死ぬ』かもしれないね」
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