巻ノ十六 千利休その四
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「利休殿の茶道は」
「この花もまた茶道と」
「拙僧は思いますが」
「はい、旦那様も実際にです」
「そう言われていますか」
「茶道はただ茶室の中で茶を飲むだけではないと」
その外においてだ、もうはじまっているというのだ。
「その様にです」
「だからですな」
「ここにあります」
「そうなのですね、花が」
「そうです、では」
小坊主は伊佐との話の後だ、あらためてだった。
茶室の入口の前に来てだ、その中にいる主に言った。
「旦那様、お連れしました」
「そうか、ではな」
太く低く風格のある、それでいて穏やかさも併せ持った声での返事だった。
「中に入って頂いてくれ」
「わかりました、では」
このやり取りの後でだ、小坊主は幸村に顔を戻してだ。一行に言った。
「どうぞ」
「それではな」
幸村が応えてだ、そのうえで。
一行は幸村をはじめとして狭く小さな入口を潜ってだった。そのうえで茶室の中に入った。茶室の中は案外広く全員が入られた。
そこには穏やかな色合いだが上等の絹の着物を着た男がいた、眉は太く顔の輪郭はしっかりとしていてだ。
大柄で背筋もしっかりとしている、その顔立ちは穏やかだ。
その男がだ、一行に微笑んで言った。
「真田幸村殿と家臣の方々ですな」
「はい」
幸村は男に応えた。
「左様です、お招き頂き有り難うございます」
「堺に来られていたので」
「それでなのですか」
「招かせて頂きました」
「そうですか、そして」
「はい、私がです」
男はここで自ら幸村達に名乗った。
「私が千利休です」
「そうですか、やはり」
「ではお座り下さい」
主従全員への言葉だ。
「これよりお茶を馳走させてもらいます」
「では」
幸村が応えてだ、そしてだった。
一行は用意されていた座布団の上に座ってそのうえで利休が茶を淹れるのを見た。それを見つつだった。
幸村がだ、利休に問うた。
「お聞きしたいことがあるのですが」
「何でしょうか」
「はい、拙者達を呼ばれたその理由をお聞きしたいのですが」
問いたいのはこのことだった。
「それは何故でしょうか」
「実は幸村殿の旅のことは知っていました」
利休は茶を淹れつつ幸村に答えた、その手の動きは優雅ではないが確かな強さと味わいがあった。
「上田を発たれた頃から」
「その時からですか」
「羽柴家お抱えの忍の者が教えてくれていまして」
「何と、拙者の様な者のことまで」
「諸大名はいつもです」
「羽柴家は、ですか」
「忍の者を送って見ていますので」
それでというのだ、秀吉の懐刀の一人である利休も知っているというのだ。
「知っていました、そして瞬く間に家臣の方々を揃えられました」
「この者達のことも」
「は
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