一話:正義の味方
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たはやてはその時は純粋に信じてしまったが勿論今は信じてなどいない。
あれは養父の渾身のギャグだったのだろうと納得している。
そんなことを思い出しながら養父の顔を見てみるとどこかを見つめていた。
気になって見てみるとファストフード店が建っていた。
「はやて、今日の夕ご飯は―――」
「ちゃんと作るからそういうところで買わんでもええで」
「……はやて、今日は診察だから疲れるだろう。僕は買って食べた方がいいと思うな」
「おとんはただハンバーガーとか食べたいだけやろ。ダメやでちゃんと栄養考えて食べんと」
「偶にはいいじゃないか……」
ガックリとうなだれる養父を無視して先を急ぐように促す。
養父はどうにもジャンクフードを好む癖があると内心溜息をつく。
なんでも『作業の手を止めず、機械的に口に運ぶだけで栄養補給が出来るのが素晴らしい』というらしいのだが食事は家族団らんで摂るべきだと考えるはやてには理解できない。
故に自身が食事の当番を受け持ち養父の食生活を守っている。
「それよりもおとんがボーっとしとったせいで診察時間に遅れそうやないか」
「父さんのせいかい?」
「そや。やから少し飛ばしていくで!」
「押すのは父さんだけどね」
今日は足の病気に関しての定期健診の日なのだ。
だからこそこうして養父を連れ立ってかかりつけ医の石田先生に会いに行っているのだ。
少し速度が上がったことで肌に当たる風を感じながらはやては満足げな笑みを浮かべる。
足が不自由でも自分は幸せだと。
――男が通ってきた道は地獄だった――
犠牲を少しでも少なくするためにありとあらゆる戦争に関わって来た。
始めは純粋に助けることで救おうとした。
だが襲い来る相手から守りたい者を守るには相手を殺すしかなかった。
なぜならそこは戦場だから。
男は気づいてしまった。救えば救うほどに自分が誰かを殺していることに。
それでもなお止まれなかった。
止まれば今まで犠牲にしてきた者全てへの裏切りとなるから。
―――男は救い続けた。
犠牲を少しでも減らすために兵力の少ない方の首脳を殺し尽した。
頭の失った者達は烏合の衆と化してあっという間に蹴散らされた。
勿論そこでも人は死んだ。だが戦争が続くよりは余程多くの人が救われた。
それでも男の心には達成感などない。殺した者への罪悪感だけが残っていた。
男は悟った。正義の味方は味方をした方しか救えない。
―――かつて抱いた理想はもはや男の胸には残っていなかった。
「変化はなし。好転しているわけでもないけど悪くなっているわけでもないです」
「そうですか……」
診察が
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