1部分:第一章
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第一章
安くて新鮮
第一世界大戦が終わりだ。
ドイツは絶望的な不況に陥った。戦争による財政破綻だけでなく連合国側から突きつけられた莫大な賠償金、それに産業の崩壊もあった。
しかも戦死者も多く働き手も減っていて町には孤児も溢れていた。まさに夢も希望もないだ。絶望的に陥ってしまっていたのだ。
だがその中でだ。
ハノーバーでだ。ある評判が立っていた。
「へえ、あの肉屋の肉か」
「そんなにいいのか」
「安くて新鮮?」
「しかも美味いってのか」
「そりゃいい店だな」
ドイツは食糧不足にも陥っていた。そこも問題になっていたのだ。
だが、だ。その中でだ。その肉屋は。
安く美味いと評判になっていたのだ。その店は。
「ハールマンって人がやってるのか」
「その人の店か」
「そんなにいい肉売ってるのか」
「じゃあ一回行ってみるか」
「そうしようか」
噂が噂を呼びだ。多くの者がその肉屋に行った。そしてだ。
肉を買っていく。そうして料理して食べてみると実際に。
「美味いな」
「ああ、これはいい肉だ」
「確かに新鮮だしな」
「滅茶苦茶安いしな」
「今こんな肉が食えるなんてな」
「こんないい話ないぜ」
こう話されるのだった。ハノーバーの市民達の間で。
だが、だ。その肉屋の主のハールマンについてはだ。まず主婦達が話した。
「私達が店に行ったら嫌な顔をするのよ」
「何か来るなっていう感じでね」
「あれはどうしてかしらね」
「まさか女嫌い?」
「ひょっとして」
こうした疑念が起こったのも当然だった。しかもだ。
ハールマンはいい歳をして独身だった。おまけに男といつも一緒だった。それを見れば余計にだった。
「まさかと思うが同性愛者か?」
「そういえば男には愛想がいいな」
「特に少年にはな」
「そうだよな」
「じゃああいつやっぱり」
「そっちか」
まずはだ。この線を疑われだした。しかしだ。
この時はだ。それを嫌がられるだけで済んだ。
「いい趣味じゃないけれどな」
「だよな。けれどな」
「今はもうそれじゃ捕まらないしな」
「じゃあいいか」
「それならな」
これだけで済んだ。
「肉は美味いしな」
「いつも新鮮で安い」
「ならいいか」
「それで」
肉屋としてはいいからだ。それでよかった。肉屋は肉が売りだからだ。
だからそれで済んだ筈だった。しかしだ。
当時ハノーヴァーではだ。奇怪な事件が起こっていた。町を流れるライネ川にだ。
白骨が流れるようになっていたのだ。それを見てだ。
ハノーヴァーの市民達はだ。怯えずにはいられなかった。
「またか」
「これ、頭の骨だぞ」
「こっちはアバラか
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