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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)
第35話:休日だって休まらない
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大作は生まれるんだなぁ。……俺、邪魔だろ? 後は持ち帰っても出来るし、居なくなった方が良いよね」

「そ、そんな事はありません! ウルフさんの方が先に居た訳ですし……それにウルフさんが帰られても、この絵が出来上がるとは思えません。私の事は気にせず、ウルフさんのペースで絵を完成させて下さい。って言うか、完成するのを見させて下さい」
この人はなんて優しいのだろう。未熟者の私に気を遣い、作画を切り上げようとしてくれた。

「そ、そう? でも、もう完成するし……」
「は、早ですね……描き上げるの」
もうウルフさんは風景を見ていない。パレットとキャンバスと、そして偶に私に視線を向けるだけ。

「描きたい物を見た瞬間、何も考えずに描くから早いんだけど、深みも芸術性もありゃしないんだよ(笑)」
み、見た瞬間って……天才は言う事が違う。
私なんか悩んでばかりだ。

「悩まないんですか?」
「悩まないねぇ……問題なんだろうけど、悩んだって描ける物は変わらないし、自分に出来る事は限られてるから」

そうか……ファーストインスピレーションこそが芸術の核であり、モチーフを変えたり描き方を変えたりしたって、碌な作品は出来上がらないのね!
学校では教えてくれない芸術の真髄なのね。

「俺、来週もここに来るんだけど、ピクトルさんも来ますか? 出来ればそのグランバニア城の絵の完成状態を見てみたいんだけど……」
「ええ!? こ、この絵の完成を……ですか?」

これは如何いう意味かしら!?
ま、まさかナンパ……?
そんな訳ないわよね。こんな野暮ったい田舎娘を、城勤めのエリートが口説く訳ないわ。

って事は……もしかしてアドバイスしてくれたのかしら?
私がこの絵を破棄しようと考えてたから、それを察知して“最初に描こうと思った物こそ、真の良作である”と、挫折した心を励ましてくれてる?

「迷惑ですか?」
「め、迷惑なんてとんでもない! 私も是非ウルフさんの作品を見たいので、来週もご一緒させてもらいます!」
一瞬の勘違いで返答出来なかった私に、柔らかい笑顔で問い直すウルフさん。

格好良すぎます。
これはもう絵を完成させなければならないですよ。

ピクトルSIDE END




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