暁 〜小説投稿サイト〜
グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)
第35話:休日だって休まらない
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

すると俺の身体で見えなかった俺の絵が目に入ったのか、一瞬呆然として……

「あ……ご、ごめんなさい。私はピクトル。ピクトル・クンストと申します」
と名乗ってきた。
一瞬の間が気になった俺は、少し身体を動かしてピクトルさんのキャンバスを覗いてみた。

んで愕然とする……その芸術的な絵の上手さに!
彼女の絵はグランバニア城をメインにした城下町の絵で、細部までの描き上げ感で言えば俺の方が正確ではあるのだが、遠近法を無視したデッサンはグランバニア城を強調し、その威風堂々感を描き表している。

きっと見たままを描いてる俺の絵に落胆したんだと思われる。
同じ場所で絵を描いてる同士的な相手の作品が、芸術性の皆無な物であった事に……

ウルフSIDE END



(グランバニア城より南東の丘)
ピクトルSIDE

ウソみたいに上手いわ、この人の絵……
何なの……如何してあんなに細部まで正確に描けるの!?
私もトップの成績で高等学校に受かったから、多少のプライドがあったけど……ウルフさんの絵を見たら、そんな安いプライドは吹っ飛んでしまう。

「上手いっすね……」
私の絵を……描きかけの絵を見たウルフさんは、間違いなくお世辞で褒めてくれた。
これだけの画力がある人だ……私の絵なんて子供の落書きにも等しいだろう。

「もしかして奨学金を受けてたりします?」
「は、はい……恥ずかしながら」
本当に恥ずかしい。この程度の腕前で奨学金を受けるなんて……

「流石その道のスペシャリストだね。グランバニア城をそこまで格好良く描けるなんて……俺なんて絵の教育を受けた訳じゃないから、その芸術的完成度は羨ましいよ」
何てこった……絵の勉強をしてないのに、この才能!
自身を天才と称すのも頷ける。

しかも、出来が気に入らず描き直そうかと悩んでた私の絵を見て、言葉巧みに良作扱いし気遣ってくれるなんて……
爽やかで格好いいわ。

「あの……ウルフさんこそ……その上手さは凄いです」
「ありがとう。専門家に褒められると嬉しいよ。ずぶの素人よりは画家力はあるつもりだから」
柔らかく笑いながら謙遜するウルフさん……

手元のキャンバスの絵は着々と色付けされて行き、完成へと近付いている。
その筆遣いには一切の迷いはなく、ここから見える景色が忠実に再現されている。
やっぱり天才は違うわ……作画に迷いがある時点で、その絵は駄作なのだろう。

ダメだ……彼の作品を見た後で、自分の絵を完成させるなんて出来そうにない。
でも、全く手を付けず立ち去ってはウルフさんに失礼だ。
まるで彼の存在が邪魔で作画出来ないみたいで……

でも手を動かす事が出来ず、唯々キャンパスを前に立ち尽くしてると、
「やっぱり迷うよね。そうやって
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ