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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)
第35話:休日だって休まらない
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若い女性が一人、丘の麓から上がってきた。
「あら……こんな場所で絵を描いてる人が居るなんて吃驚」
女性は俺の姿を認識すると、心底驚いた感じで言葉を発し、他にも人が居ないか周囲を見渡し確認してる。
折角一人になれる優雅な時間だったのだが……まぁ仕方ないか。
「あの……隣で私も描いて宜しいですか?」
「宜しいも何も、ここは俺の領地って訳じゃないから拒絶なんて出来る権限はありません。むしろ俺が邪魔してませんか? 何だったら退きますけど……」
年の頃なら16.7歳くらい、俺とそんなに違わないだろう。
髪型はショートボブで、野暮ったい眼鏡をかけてはいるが可愛い顔立ちの女性に、師匠直伝の甘い口調で対応する俺。
「い、いえ……それには及びませんよ」
俺としては描くべきモノを記憶しているので本心からの台詞であったが、心優しい彼女は俺の斜め左後方に陣取り、退く必要性がない事をアピールする。
「ここには良く来るのですか?」
気まずい雰囲気を回避したいのか、イーゼルを組み立てながら話しかけてくる女性。
「ええ、2週間程旅に出てたので先週・先々週は来られませんでしたけど、それ以外では毎週土曜日の午前中はここでスタジアムが出来上がる過程をスケッチしてます」
絵を描く為の作業着なのか、絵の具が斑に付いた野暮ったい服を着ており、屈んで作業する彼女の胸元は丸見えで、俺はその胸の谷間から目が離せない。
「あら、そうなんですか。私は丁度先週からここへ来てお城を描いてます。学校の課題でして……」
「課題? ってことは高等学校の生徒さんですか?」
屈んだ状態から顔を上げて俺に視線を移してきたので、慌てて俺も視線を自分の絵に移し会話を続ける。
「はい。半年前に入学したばかりですけど……貴方も高等学校の生徒ですか?」
「俺? 俺は違うよ。城で働いてるんだけど、上司の命令でスタジアムを描き止めてるんだ」
彼女はまた視線を移し、組み立てたイーゼルにキャンバスを乗せてる。
「まぁ……お城で。お若く見えましたけど、お幾つですか?」
「実際若いッスよ。18歳ですからね」
絵の具等の準備をしてる彼女……もう胸チラは拝めなさそうで残念だ。
「失礼しました。エリートさんでしたか」
「エリートではないなぁ……年も若く優秀だから、面倒事を押し付けやすいんだと思います。まぁ天才である事に違いはありませんけどね(笑)」
自ら天才と言い虚栄を張る俺は、まだまだ未熟者である事に間違いない。
相手が美人だと格好つけてしまうんですよ。
リュカさんには遠く及ばないなぁ……
「あぁ失礼しました、まだ名乗ってませんでしたね。俺はウルフと言います。貴女は?」
美人と仲良くなっておきたい俺は、身体ごと彼女に向き直り正式に自己紹介をする。
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