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ススメシリーズ
結婚相手のススメ
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 ……ところがです。
 無事に挨拶も終わり、あのお方と二人で部屋へと戻ろうとしている最中にあの男が偶々、そう偶々通りかかったのです。
 あの男が誰かって……?
 そうね、まだクシナは知らなかったのかしら。一度しか言いませんわよ、あの男の名をうちはマダラと言うのです。
 兼ねてからあのお方の……認めたくないですけど好敵手として、あのお方に継ぐ実力の持ち主として、忍界にその名を知られておりましたわ。

 ですけど、性格はいたって礼儀知らずの傲岸不遜な男で……ことあるごとにあのお方へと突っかかって……思い出すだけて眉間に皺が、あらいやだ。
 あのお方がまたあの男の振る舞いを笑って許容なされるから、あの男もますますつけあがって……まあ、私の顔が恐い?

 ごめんなさいね。そんなつもりは無かったのだけれども。
 ついつい……。

 そうそう。それで、二人が顔を合わせてどうなったか、ですって?

 その頃にはあの男の方もあのお方の性別を知っていましたからね。
 女子の衣装をまとったあの方を見ても、微かに目を見開いただけでしたわ。

 取り敢えずすれ違っただけとはいえ、挨拶ぐらいはしなければとあのお方が立ち止まって、私も渋々足を止めましたの。
 ――何が悲しくてあのお方の艶姿をあんな奴に見せてやらねばいけないのですか。

 ああ、思い出すだけで腹が立つ。

 一言二言、お互いに当たり障りの無い事ばかりを会話して、そのまま私達が立ち去ろうとした時ですわ。
 先程まではあの男を睨むのに精一杯だったせいで気付かなかったのですが、あのお方の御髪が一房解けていたのに気付きましたの。

 そうしたら!
 あの男が、あの方の御髪を掬い上げて!

 ――ええ、そうです。
 無遠慮にも断わりの一つもなくです! 常の如くの仏頂面で、あの方の御髪を手にしたかと思うと、そのままあのお方の耳にかけて!

 確かに髪の乱れはそれで目立たなくなりましたけど、あの男がせずとも私がやりましたのに!!

 しかも「解れていた」ですって!?
 わざわざお前がしなくとも私がやりましたわよ! ほんっっとうに、余計なお世話でしたわ!!

 ――はぁ、はぁ……。
 嫌だわ、私ったらはしたない事を……まあ、恥ずかしい、おほほほ。

 あのお方も驚いておられたようですけど、私だって驚きましたわ。
 普段は人を人とも思わぬ態度しか取らぬ男が、そのような真似をなさるのですもの。

 あのお方は滅多に無い態度に驚かれたようですけど、直ぐさま微笑みを浮かべてあの男に礼を述べるのですもの。
 確かに誰に対しても気さくな態度こそあの方の最大の魅力と言ってもいいのですが……だからといってあんな男に礼を言う必要なんて……ああもう、心底忌々しい。

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