二十一話
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そうに笑って見えた。
その場に立ちたいと、横にありたいと思ったのはその時が切っ掛けなのだろう。
数年後、少年は最年少の天剣授受者となった。ルッケンスは更に大きくなり少年は「若先生」と敬意を込めて呼ばれた。
自分も順調に鍛錬を積み強くなっていった。
そして、あの日の大人への疑問も理解していった。
少年は強すぎたのだ。だから皆「あれは違う」と。「才能」が「生まれ」が「存在」が違う。自分たちでは届かない場所にいる。
――――アレならしょうがない
そんな思いが自然と少年と自分たちとの対比をやめ敬意のみ。同じ世界に“踏み込もう”としない。焦りも競い合う気持ちもなく違う世界を見るように見ていた。
自分の視線を放置していたのもいずれ「それ」を理解するだろうというそんな周りの予想。
無論皆上を目指してはいた。鍛錬を積みいつか天剣に、という思いはあれど心の底からではない。
自分もそれは薄々理解していった。だが、嫌だった。
それを実感し切る前に、心が折れる前にきっと、きっと折れずにたどり着ける。その思いでただひたすらに、自分を虐めるかのように鍛錬を積み続けた。
その御蔭か月日が過ぎるごとに道場の中で頭角を表すようになった。だが実力が上がるというのは力を知ること。少年との差を理解していった。
更に数年。現実への理解を拒むような過密で過剰な鍛錬は師範代候補になる迄に自分を成長させた。
食糧危機もあったが同門どうしで協力し合い、こんな時だからこそ強くあろうと語り合った。暴動が起これば都市警の力になりに走った事もあった。
だがその頃には自分の才を理解し青年となった相手との差をより一層理解し「昔の大人」と同じになりかけた。
そんな時、一人の少年の指導を指名された。彼は青年の弟だった。
何故自分が指導をするのか。それを彼の父親に――青年の父親である流派の長に訊ねたらこう返ってきた。
『誰にするか決める際にな、あいつにも聞いてみた。そうしたらお前の名を言った』
後で本人に聞いたところたまたま覚えていた名で他の者の名前をロクに覚えていなかったからだという。
自分の名を上げてくれたというその言葉が嬉しく、引き受けることを決めた。
引き受け少年を指導した。自分をよく慕ってくれた。そして思った。
ああ、これは“自分”だと。
兄弟として長く共にいたからだろう。少年の心は「昔の大人」とほぼ同じだった。それだけでなく青年に対し“それ”以上の何かを感じているようだった。
少年には流派に対する確かな筋があった。それこそ自分よりずっと。向上心もあった。だが兄への諦観の念は周り以上だった。
それがたまらず悔しく、哀しく、これが自分なのかと動揺し、決めた。諦めないと。
同情心だったのかも
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