二十一話
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『あの人は誰ですか?』
――あの方はサヴァリス・ルッケンス様だ
自分の質問に対し返ってきたのは“踏み込まず”の敬意の念だった。
十年以上前のことだ。
武芸者である父によってルッケンスの門を叩いた。
基礎鍛錬をある程度積んだ自分に流派を持たせるためだ。そうしてルッケンスに入門した。
自分を高められる、知らぬ技を己が物と出来る。そうして高まる心で向かった道場の先にその少年はいた。
第一印象は苛烈。その場にいた誰よりも鋭く、獰猛に技を放つその姿に一瞬息が止まる程魅入られたのを覚えている。
第二の印象は剛と流。少年には相手がいなかった。けれど空に技を放ち道場の空気を震わせ、節目の止まりを感じさせぬその動きは確かに見えぬ敵を意識し、道場内の誰よりも洗練されていた。
見たところ同年代のその少年が誰なのか。湧いた興味に近くの大人に聞きその正体を知った。
その答えに自分は納得し心躍らし、そして同時に小さな疑問を抱いた。
その大人の声が、目が、純粋すぎた。境が有りどこか遠くを見るようだったからだ。
だがその疑問も、あの少年のいる場で学べるのだと、あの技を身につけられるという喜びの前に消えていった。
鍛錬はきつかった。父親からのとは違う甘えの入らぬそれに諦めかけたこともあった。だがその度に……いや、息を整える間に、体を休める間に自然と視線は少年の方を向いていた。その度に諦めの念は自然と消えた。
『……何か用でも?』
そんな度重なる自分の視線に気づいた少年が話しかけてきたこともあった。
『あ、いえ! 用などではなくただその、えと、すみません! 凄くてつい見てました!!』
『……ああ。そういえば見たことない顔ですね。いえ、もしかしたら興味がなく忘れてるだけかもしれませんが』
『自分は―――』
つまらさそうにする少年に名乗り、どうでもよさそうに聞かれたこともあった。
そんな事もあったのにその後も見る視線は変わらなかった。
そんな自分への周りの声も不思議だった。父親のように奮起させるでもなく、よそ見を諌めるわけでもなく、ただ「ああ、またか」とでも言う様に見ていた。
けれど“いつかあそこまで”。その思いのままに、少年が使う技を憧れにひたすらに鍛錬を続けた。
短い間であったが共に戦場に立ちことも出来た。
血の滲む様な鍛錬を経て覚えた技が嬉しくそれを使って皆と協力して立ち向かった。
そんな自分と違い少年は一人で戦っていた。一撃一撃と汚染獣を屠り、死骸を築き上げる。
その強さに自分は憧れ、勇み足をしかけて周りに諫められもした。
いつもつまらなそうに笑って見えた少年が、汚染獣を相手にしている時だけは楽し
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