二十一話
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ちに封筒贈るから」
「分かりました」
段取りを決めながらレイフォンはアパートへ帰っていった。
旅立ちの日はいつも少し風が強い。
宙に浮いた放浪バスが小さく揺れその身の不安定さを表しているようでつい視界に映してしまう。
都市の足が規則的に動くのが視界の端に映る。中心部から遠く、都市の足の振動が強く現れるここは地面が震え改めて自分の世界の怖さを思い出されそうになる。自分たちの住む地が人工物なのだと。
次にここに帰ってくるのはいつになるだろう。いや、帰れるのだろうか。ふとそんな思いにまで囚われる。
そんな事を思いながらレイフォンはバスの停留所にいた。
用意した荷物は大きめのカバン一つと小さいカバン一つ。腰元に錬金鋼。それで全てだ。
近くにいるクラリーベルとアイシャも似たようなものだ。見送りのリーリンとデルクだけが何も持っていない。
「グレンダンから出るのは初めてです。ちょっと楽しみですね」
クラリーベルが楽しそうに言う。
「バスってどんな感じなんですか?」
「どんな感じって……割り当てられた簡単なスペースがあってそこで寝ます。長期滞在用の機能はあるので慣れるとまあ、ちょっと窮屈だけどそこそこ普通ですよ」
何度も乗った経験と、シンラたちの放浪バスでの経験を踏まえ言う。
「二度目ねこれ。戻って一年経たずにまたレイフォン出て行っちゃうなんて……」
リーリンが淋しげに言う。
「ゴメンねリーリン」
「今度は数年よね。手紙ちゃんと送りなさいよ」
「分かってる」
「変なことしないように勉強してきなさい。あなた馬鹿なんだから」
「酷いなそれ。……ゴメン、謝ることしかできないけど」
何も言えず、それしか言えない。言える言葉がレイフォンには思いつかない。
はあ、とリーリンが溜息をつく。
「……そんな顔しないの。確かにしたことは馬鹿だったけど、あれ、私たちのためにしてくれたんでしょ。ずっとさ」
「……」
「私は、その思いには感謝してる。ありがとね」
でも、とリーリンは続ける。
「それでレイフォンが悲しむのなら、私は嫌だな。これからはさ、私たちだけじゃなくてもう少し自分のことも大切にして欲しい。色々頑張って、ちゃんと帰ってきてね」
「……うん。ありがとうリーリン」
放浪バスが下ろされ人が乗り始める。
「レイフォン、行こう。私たちで最後」
アイシャに呼ばれる。既に二人はクラリーベルとアイシャはバスの入り口近くにいる。
そちらに行こうと足を向けたレイフォンに今まで無口を貫いていたデルクが声をかける。
「レイフォン」
「……何、養父さん」
レイフォンは振り返る。
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