二十一話
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「そんな僕の愉しみを、そんな下らない理由で!!」
朦朧とする意識の中、ガハルドはサヴァリスを見る。
共に並びたいと。拳をぶつからせたいと思った相手がそこにいた。
そんな相手が言う。お前がしたことは、抱いた思いは下らない。自分の楽しみを邪魔するなと。
憧れていた。その背に追いつきたいと願いを抱いていた。
お前の矜持なんて下らないもので自分の愉しみを潰すな。そう言われた。
かつてつまらそうに拳を振るっていたサヴァリスが浮かぶ。振るう技に見惚れ、皆と見ていた若先生の姿が浮かぶ。
“憧れ”が脳裏に浮かぶ。
――――ああ
とうに力など入っていなかったハズの自分の体。なのに何故か力が抜けていくのをガハルドは感じた。
ガハルドを壁から引き剥がしサヴァリスは振りかぶる。そのまま投げ、一直線に壁に投擲する。
凄まじい音と共にガハルドが壁に衝突し、床に崩れ落ちる。
「父からの……ルッケンス本家からの処罰を言い渡します」
指一つ動かせないガハルドの右腕をサヴァリスは踏みつける。
つまらなそうに。路肩の石でも見るようにサヴァリスが告げる。
「『チャンピオンとして賭け試合へ加担、並びに授受決定戦対戦相手への脅迫。これらはルッケンスの流派に対する侮辱と、武芸者としての矜持を故意に犯したと見なす。今まで流派に対する貢献はあれど、此度派生した事件性の大きさから見ても看過することは不可能。よって、ガハルド・バレーンを破門する』、だそうです。表向きは被害者扱いに近いので門下生などには伝えませんし公然とは破門ではありません。暫くは札も残すそうです。ですが、もうこなくとも結構ですので」
サヴァリスは踏みつけたガハルドの右腕を軽く蹴り上げる。そうして上がった右腕(ききうで)をサヴァリスは蹴り抜き砕く。
ガハルドが全てを賭けて積み上げてきたそれが、ゴミのように砕かれる。
もう、お前に入らないだろう? とでもばかりに。
「かつて言ったはずです。天剣になるものは、そう生まれた時から決まっていると。身の程を知るんでしたね」
そのままサヴァリスは踵を返し道場の出口へと向かう。
出る寸前「ああ、そうそう」と吐瀉物に汚れた床を示しサヴァリスは言う。
「そこの床、掃除してから帰って下さいね。後「稽古」でしたので治療費はこちらで持ちます」
動けないガハルドにそれだけ言いサヴァリスは去っていった。
広い道場にただ一人。ガハルドは体に走る痛みと、何に対してか分からない空虚に震え続けた。
ガハルドが何とか動けるなったのは数時間。空も暗くなってからのことだった。
引きずるように体を動かし何とか掃除を終えそのままの足で街に出た。顔には傷とハレがあるが別
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