二十一話
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「お、あ。うえ、ッぅぷ。……はぁ、はぁ……」
「汚いな」
サヴァリスは言い、ガハルドの脇腹を蹴り飛ばす。ガハルドはもはや起きる力さえない。
「試合で、すこ……し、は……」
「手加減されて戦って、勝てるとでも思ってしまったのかい? なら、なんて愚かなんだろうね。身の程を知ったほうがいい。どの程度手加減されているかも理解できないくせに。まったく、馬鹿なことしてくたよ。そもそもは何だ? 何がしたかったんだい」
転がったガハルドの元へもう一人サヴァリスが現れる。
「千人衝だよ。今は一人分だから名に偽りありだけどね」
「これ、……が……」
呻くガハルドの頭を現れたサヴァリスが爪先で小突く。
「ああ、そう言えば君は秘伝書の閲覧を許されてたね。――君と違ってレイフォンはこれが出来るよ」
「な――――ッ」
“いつか”と夢に見て修行していた秘奥。サヴァリスの言葉にガハルドは絶句する。
驚きの声を上げるガハルドをサヴァリスはもう一人の方へと蹴り飛ばす。剄の分身が消える。
呻くガハルドを見て「つまらないな」とサヴァリスが呟く。
「あん、な……あんな子供、が。若、せんせいと、並んでなん、て……」
息をするだけで痛む喉で、それでも、とガハルドは言う。
「俺が……倒し、て。消さ、ないと……って。“踏み込め”、無い……って。「大人」が、諦め……て。賭け、なんて。あんな、やつ……が」
「君がしたことは既に天剣の人たちは知っているよ。その口で何を言う。同じ穴の狢に過ぎない。否定できる何がある」
言い、サヴァリスがガハルドの首元を片手で掴み持ち上げる。
「悪だと断罪したければもっと自分から大衆に言えばよかったろう? ああ、それとも自分も賭け試合に関わっていたから表立って言いたくなかったのかい。少なくとも脅した時点で君の言い分なんて何もないよ」
少しずつ、少しずつガハルドの首を絞める力は強くなっていく。
「――――だが、僕としてはそんな事どうでもいいんだ」
サヴァリスはそのままガハルドを背後の壁に思い切り叩きつける。
「下らない。なんて下らないことをしてくれたんだ君は!!」
首を捕まれ悲鳴さえ挙げられず、ただ口を開くガハルドに向かってサヴァリスは言う。
「後少しでレイフォンは天剣を手にした! 全力を出せる武器を手に入れた!! 余計なしがらみもない!! ”被害を気にせず全力で殺し合える場所”があった!!! クラリーベル様とも仲が良かった!!」
サヴァリスが叫び続ける。
ガハルドには何のことだか理解できない。
怒りをぶつける様にサヴァリスは手に込める力を強めていく。武芸者用に拵えられたハズの頑丈な壁が余りに過剰な剄に撓み、罅割れていく。
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