二十一話
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ンの体を叩いた。
「があ……ッ、ぁ……」
意識が今に戻る。
押し殺された悲鳴が喉から絞り出される。だがそんな事関係ないとばかりに絶え間なく衝撃が体を走り続ける。
吹き飛ばされ道場の壁に背中から激突。倒れ、未だ動く左腕で痛む上体を何とか持ち上げる。
「何故……です、か。若、せんせ―――ッか、ぁ」
最後まで言うことも許されずガハルドはサヴァリスに蹴り飛ばされる。
件の事件で右腕と左足を切り落とされガハルドは入院していた。素早い処置に命に別状はなく、腕と足も比較的早く接合された。
だが当事者として事件のことが少し収まるまで入院は少しばかり延期され、そして今日退院することになった。
そんなガハルドの前に現れたのがサヴァリスだ。「稽古をつけてあげよう」と有無を言わせずガハルドを道場まで連れ、稽古と呼べない一方的な虐殺が行われた。
そうして今に至る。
「何故?」
サヴァリスが言い、拳を振るう。
立ち上がれず蹲るガハルドに化練の糸を通じた衝撃が伝わる。
何とか打ち消そうと思うも、ガハルドにはサヴァリスが拳を振るうモーションすらロクに見えない。それでもリズムを先読みしようとするが、それを読んだかのように衝撃の伝わる部分が絶えず変わっていく。
「まあ、罰みたいなものですよ。あなたの方にはおおっぴらに処罰を与えられないのでね。これはあくまで稽古ですよ」
ガハルドの腹部に衝撃が走る。痛みに丸く蹲っていたガハルドはその衝撃に弾かれ僅かに宙に浮き、そこを横殴りの剄に襲われゴミのように吹き飛ばされる。
「それと、僕自身の怒りもある」
ガハルドのすぐそばで声がする。
吹き飛ばされた先にサヴァリスは一瞬の間に現れ、転がるガハルドをお手玉でもするかのように蹴り上げ宙に浮いたところを殴り飛ばす。
「……ッ、あ……」
殴られ続けガハルドはもはや悲鳴もロク出ない。
力量差が違いすぎるとガハルドは思う。昔から比べれば格段と縮まったのは理解できる。背さえ見えなかったのが、足元に小指をかけられる程度にはなったとガハルドは思う。昔なら何をされたかもわからなかった。確かに近づけたと。―――それがまやかしでも。
だが、それでもサヴァリスとの間には未だ確然とした差が横たわっている。
「そもそも、レイフォンに敵うとでも思ってたのかい?」
壁に飛ばされ、そこを不可視の風が殴り続ける。
一度、二度、三度、四度、五度……。
ガハルドは膝を折ることすら許されず暴風を受け続ける。
「知ってたはずだよね。レイフォンは僕と戦えるって。君程度が適うわけ無いだろう。何を勘違いしたんだか」
貫くような衝撃がガハルドの腹部に走る。耐え切れず、嘔吐してしまう。
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