暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
アリアの願い
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 アリアが表に出てるだと!? そんな気配は全然無かったぞ!
 人間に見られるほど派手な動きしてんなら、王都で何の情報も無いのは不自然だ。昨日まで一週間も居たんだぞ? 具体的な目撃情報どころか女神出現の噂話一つ耳に入らなかったってのに、なんだこれ!?
 「その紙は昨夜、私達が世界樹の根元に居る時に結界へ侵入した人達が持っていた物なの。彼らは熱狂的なアリアの信奉者で、近くに在る人知が及ばない場所を手始めに女神を探そうとしてたみたい。貴方達と同じね。申し訳ないけどフィレス様に気絶させてもらって、記憶を覗いた後、強制的にお引き取り願っておいたわ」
 「紙切れの出所なんざどうでもいい! 俺達はこんな話、欠片も知らない。地方神父の作り話とかじゃねぇのか!」
 「いえ。こんな話を作っても上下内外から不審を買うだけで何の得にもなりません。最悪異教徒に殺されるか、上の人間に不敬罪と見做されて処刑されます。よく見てください。日付は昨日の物ですが、内容は国外の情報が主なんですよ」
 フィレスが横から文面を指し、続きを読めと促す。
 「国外の情報が伝わって来るまでと、内容の確認に掛かる時間。加えて対応を検討する期間が必ずあった筈。恐らく、アリア信仰の上層部と国の上層部が揃って緘口令を敷いていたんだと思います。私も師範の教会でお世話になっていながら、侵入者の記憶とこの会報を見るまで全く知りませんでしたから」
 そういやコイツもアリア信仰の教会に居て、アリアと同じ容姿の女に会った事を神父に話したとか言ってたな。神父がその話に食い付かなかった時点で余計に胡散臭いが……
 『先日より諸外国において未開拓地域や複数の異教団体代表者等の元に女神アリア様が度々降臨されているとの件について』
 『国内外のアリア信徒が直接御姿を拝したという報告は成されておらず、その信憑性には疑問が残ります』
 『しかし、各地で入信や改宗の希望者が急速に増加しており、一方でアリア信仰に対する異教団体の不穏な動きも懸念されています』
 『我々アリア信仰は創造と癒しの女神に仕える立場から、不要な争いを招かぬよう、信徒方に布教活動の自粛と日々の静粛なる祈りを広く願うものとします』
 ……あの女、自分に仕える人間を悉く無視して他の宗教関係者を誑かしてんのか。
 「信徒が急速に増加している。つまり、上の人間がどれだけ止めても国内に話が広まるのは時間の問題だった。だから、混乱を避ける為に敢えてこういう形で先手を打ったんだと思います」
 「なら、もっと早く開示しろよ! 腹立つな!」
 「それだけ慎重な対応を迫られているのでしょう。アリア信仰内だけで収まる話ではありませんし……一つ間違えれば、宗教を越えた国家間戦争にもなりかねません。宗教と権力は繋がってますから」
 グシャグシャに握り潰して捨てた会報
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ