遺跡出現までの10日間【2日目】 その7
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「そうなのか……災難だったね……」
僕の言葉にシグルズさんは瞳を伏せた。
「皆……みんな死にました……僕のせいなんです………僕が弱かったから……ライトさんもローラさんも皆……うぐっ……」
「辛かったね……でも、君のせいじゃないよ」
シグルズさんがやさしく僕の肩に手を乗せる。ミントのような香りが僕の鼻をくすぐる。
「遺跡出現はあと8日後だ、もう暗くなるから今日はゆっくり休もう」
「!?」
シグルズさんの言葉が終わった瞬間『セリムの宿』の前に移動していた。あまりの出来事に思考がついて行かない僕は目を白黒させる。
「ハハ、そんな驚いた顔されるとちょっと困るなぁ……」
シグルズさんはちょっと困った顔をする。
「僕の能力。ま、正確にはこの『聖剣』の能力なんだけど……。とりあえず今日はゆっくりおやすみ、あ、『レバルドオウム』忘れてきちゃった……明日届けとくね、それじゃ」
シグルズさんは手を振ると僕の視界からシュッと消える。もういいや、この人についてこれ以上考えるのはよそう、次元が違いすぎる。
「…………」
僕はゆっくりとした足取りで『セリムの宿』の入り口を通る。
「ちょ、ちょっと! 大丈夫ですか!?」
他の冒険者の会計をレジでしていたアカリちゃんが駆け寄ってくる。
「大丈夫です……」
かすれた声で何とか答える。
「血だらけじゃないですか!? 一体何があったんですか!?」
アカリちゃんが騒ぎ立てるので人が集まってくる。あまり注目は浴びたくないな……。
「すいません、今日はゆっくり休ませてください。明日説明しますから……」
もう疲れた……。僕はアカリちゃんから離れると階段を上がり自室に入る。僕が遺跡に潜ってる間にアカリちゃんがシーツを変えてくれたのかシーツがきれいになっている。僕は無造作に鎧を脱ぐと布団にゆっくり横になる。
「ローラさん……ライトさん……」
少し心が落ち着いてきたが再び目尻が熱くなる。ぐにゃりと視界が歪んだ。
僕が弱かったから……僕に力がなかったから……みんな守れなかった……。
目を閉じると瞼から熱い雫が静かにこぼれ落ちた。
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