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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十五話  ジャムシード
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を吐きたいのは私なんだが……。ああ、さっき吐いたか。さすがに拙いな。

第十三艦隊と第十五艦隊が合流後、帝国軍は進撃を再開した。こちらとしても敵をジャムシードまでおびき寄せる必要があるから基本的には問題は無い。問題は眼前の光景だ。スクリーンには二倍の兵力で攻撃を仕掛けてくる帝国軍の姿が映っていた。

六個艦隊の内四個艦隊を攻撃にあて二個艦隊を後方で休息させている。そして三時間ごとに時計回りにスライドして二個艦隊ずつ交代している。つまり帝国軍は六時間戦えば三時間の休息を得られるわけだ。タンクベッド睡眠や食事を摂るには十分な時間だろう。だが同盟軍には休息は無い。既に戦闘状態に入って十八時間が過ぎている……。二倍の兵力を相手に戦うのだ、肉体的疲労だけでは無く精神的な疲労も蓄積されて行くだろう。

兵力差を活かした戦闘を仕掛けてくる。ヴァレンシュタイン元帥は小技を仕掛けるより正攻法で攻める事を好むようだ。ジャムシード方面に後退はしているがこのままでは将兵の疲労は蓄積する一方だ。疲労が蓄積し続ければ決戦時にとんでもないミスを犯しかねない。

失敗だった。露骨に下がっては帝国軍も警戒するだろうと思って多少の戦闘行為は仕方がないかと思ったが……。これなら真っ直ぐ下がった方がましだった。カールセン提督も慣れない撤退戦で苦労しているだろう。ムライ参謀長も不安に思っている。

已むを得ない、撤退に専念しよう。これ以上ズルズルと遅延戦闘を行うのは危険だ。損害だけが増え帝国軍の思う壺だろう。この現状から撤退するのは難しいかもしれない、帝国軍に付け込まれるかもしれない。しかしこのまま出血死するよりは良い。
「撤退する。ムライ参謀長、カールセン提督との間に回線を繋いでくれ」
「はっ」



帝国暦 490年 4月 7日   帝国軍総旗艦ロキ  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



「同盟軍が撤退します」
ヴァレリーが“反乱軍”と言わずに“同盟軍”と言った。もっとも誰もそれを咎めない。第一俺が咎めないし時々俺も同盟軍と呼ぶことが有るからな、皆も咎め辛いのだろう。ヴァレリーは大丈夫かな。同盟軍と戦う事になる、負担にならなければ良いんだが……。平静を装っているがあまり負担に思うなよ、出来るだけ戦わないようにするから。

「追撃しますか?」
「その必要はありません。ゆっくりと彼らの後を追います」
ワルトハイムはちょっと不満そうだ。戦果を拡大したい、そう思っているのが分かった。
「そろそろフェザーン方面から反乱軍の主力艦隊が戻ってくるはずです。目の前の艦隊との戦闘中に現れると厄介です。身軽にしておきましょう」
ワルトハイムも納得したのだろう、頷いてオペレーター達に指示を出し始めた。

ヤンとカールセンが遅滞戦闘ではなく撤退を始めた。損害が
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