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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十五話  ジャムシード
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ヴルヘイムですね」
『そうなるな』

ニヴルヘイムは北欧神話の九つの世界のうち下層に存在するとされる氷の国の事だ。そしてこの侵攻作戦ではシリーユナガルの暗号名でもある。メルカッツはシリーユナガルに向かっている。アルテミスの首飾りを破壊する氷を得るために……。

「メルカッツ副司令長官に油断しないように伝えてください。反乱軍はこちらに来ると思いますが万一の事も有ります」
『分かった、そう伝えよう』
「宜しくお願いします」

俺が頼むとシュタインホフ元帥が“うむ”と頷いた。
『では十分に気を付けてな』
「はっ、有難うございます」
通信が切れた。気を付けてか、らしくないぞ、シュタインホフ。不安になるじゃないか。

同盟軍はとうとうヤン艦隊が合流した。目の前には二個艦隊が揃っている。傍受した通信からするともう一個艦隊を率いるのはカールセンらしい。知将ヤン・ウェンリーと猛将ラルフ・カールセンか。余り楽しい組み合わせじゃないな。これにフェザーンから艦隊が戻ってくればビュコック、ウランフが揃う。シュタインホフが心配するのも無理は無いか。

まあこちらとしても不満は無い。前後に分かれて動かれるよりも一つに纏めた方が対処はし易いのだ。問題はこれからどうするかだな。こっちとしてはビュコックにハイネセンに戻られるのは面白く無い。戻られてはメルカッツのハイネセン攻略が難しくなる。

こっちにビュコックを引き付けて帝国軍の各個撃破を狙わせハイネセンをがら空き状態にするにはやはりジャムシードまで押し出す必要があるだろう。そこまで押し出せばビュコックもこっちを止めるのを優先する筈だ。実際こちらに向かっているとは思う。ヤンがカールセンと合流したのはこちらに進撃し易くさせるためだ。明らかにハイネセン近郊での各個撃破を狙っている。ジャムシードに誘引していると俺は見る。タヌキとキツネの化かし合いだな。

どうやってヤンとカールセンをジャムシードに押し込むか。全軍で一気に押し出す? 止めた方が良いな。ヤンが危険を感じて本気になりかねん、とんでもない損害を受けそうだ。ゆっくり進撃すれば勝手に下がってくれるか? 可能性は有るが戦闘が生じないと決めつけるのは危険だろう。

戦闘が生じるのを前提として行進するべきだ。或る程度余裕を持たせた方が良いだろう。疲労が溜まらない様にする必要が有る。……あれが良いかな、あれで行こう、楽が出来る。上手くいけばだが……。



宇宙暦 799年 4月 7日    第十三艦隊旗艦ヒューベリオン ヤン・ウェンリー



「やれやれだな、付け込む隙がない」
私が溜息を吐くとムライ参謀長が咳ばらいをした。
「閣下、嘆いていても始まりません。如何しますか?」
「さあ、如何したものか……」
今度は溜息を吐いた。溜息
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